営利目的略取,逮捕監禁,詐欺,死体遺棄
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が3つの事件に関与した併合事件である。第1・第2の事件では、被告人が氏名不詳者と共謀の上、不正入手した他人名義の自動車運転免許証を用いて、平成30年5月22日に東京都港区の銀行支店で他人名義の預金通帳及びキャッシュカードを詐取し、さらに同日、川崎市の家電量販店で携帯電話機2台及びタブレット端末1台(販売価格合計約30万3,720円)を詐取した。 第3・第4の事件はより重大である。被告人は、インターネットの匿名掲示板でのI(後に死亡)の呼びかけに応じ、見ず知らずのH及びIと集まり、互いに偽名を名乗り合って共謀した。役割分担を謀議し、結束バンド、下見用・実行用の複数の服装、変装用のかつら、帽子、軍手を用意し、別の駐車場で予行演習まで行った上で犯行に及んだ。平成30年5月26日午後6時21分頃、浜松市内のパチンコ店北側駐車場において、スポーツジムから出て自動車に乗り込んだ被害者(当時29歳の女性)に対し、被告人が助手席側から、Hが運転席側から乗り込んで被害者を押さえ込み、営利目的で略取した。その後、自動車を発進させ、翌27日午前4時20分頃までの約10時間にわたり、結束バンドで両手首を拘束するなどして逮捕監禁した。さらに被告人は、Iと共謀の上、同日頃、静岡県藤枝市内の山林において被害者の遺体を土中に埋めて遺棄した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役7年に処し、未決勾留日数中170日をその刑に算入した(求刑懲役10年)。 量刑判断の中心は判示第3の営利略取・逮捕監禁である。裁判所は、匿名掲示板で集まった者らによる匿名性の高い犯行であること、結束バンド・変装具の準備や予行演習を伴う周到に準備された計画性の高い犯行であること、縁もゆかりもない若い女性を標的にした無差別的犯行で社会に与えた不安感等の悪影響が極めて大きいこと、被害者に落ち度や不注意が全く認められないことを指摘した。被害者は「助けて」「殺さないで」と必死に抵抗したが結束バンドで拘束され、約10時間にわたり車外に出ることなく、口封じのためとして屈辱的な姿態を撮影されるなどしており、犯行態様は誠に悪質で、被害者の肉体的・精神的苦痛は極めて重大であるとした。 被告人固有の事情としては、被告人が駐車場で被害者を追尾して具体的対象者として選定した重要な役割を担ったこと、助手席側から乗り込んで被害者を力ずくで押さえ込み犯行に不可欠の役割を果たしたこと、「叩き」という強盗の隠語を用いて事前に仕事内容を確認し報酬目的で加担しており犯意は強固であったことを指摘した。Iに子の通学先を告げて脅迫されたため加担せざるを得なかった旨の弁解については、酌量の余地は乏しいとした。 判示第4の死体遺棄については、自らの関与する犯行のみならずIによる殺人行為をも隠ぺいする目的で敢行されたもので、厳しい責任非難が向けられるべき動機であるとし、自ら掘削用ショベルを購入して穴を掘るなど重要かつ不可欠な役割を果たしたと評価した。判示第1・第2の各詐欺についても、常習性があり手慣れた一連の犯行で被害金額も多額であるとした。 他方、被害者の遺体発見報道を受けた翌日に自ら捜査機関に出頭し、最終的に本件各犯行を自白していることから一応の反省は認められるとしつつ、携帯電話機を破壊するなどの証拠隠滅を図った上での出頭であり顕著な改悛の情から出頭したとはいえないこと、捜査段階及び公判廷で幾度も供述を変遷させ不合理な弁解を弄しており真摯な反省の情までは認められないこと、遺族の処罰感情も峻烈であることを総合考慮し、主文の刑期が相当であると判断した。