不正競争行為差止等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30ネ10080
- 事件名
- 不正競争行為差止等請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2019年2月21日
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、LPガス販売業者である被控訴人(日本瓦斯株式会社、一審原告)が、競業者である控訴人(株式会社エルピオ、一審被告)およびジェステックに対し、不正競争防止法2条1項15号に基づく虚偽事実告知・流布の差止めや損害賠償等を請求した事案の控訴審である。LPガス業界では、顧客が競合他社への契約切替えを希望した際、これを阻止するためにいわゆる「防戦資料」を交付して説得する営業手法が用いられることがある。被控訴人は、控訴人らが被控訴人との契約切替えを希望した顧客宅を訪問し、被控訴人のガス料金が契約後に頻繁に値上げされるかのように示す料金推移表(「契約時単価230円が2014年8月には520円まで値上げされる」といった記載)や、「安売りした分の元を早く取るために、切替後は輸入価格に関係なく値上げを繰り返し、凄まじい勢いで前のガス会社より大幅に高くなる」などの記載のある資料を交付して、被控訴人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知・流布したと主張した。原審(東京地裁)は控訴人らに対し、虚偽事実告知・流布の差止請求を認容するとともに、損害賠償をジェステックにつき165万円、控訴人につき220万円の限度で認容し、その余の請求を棄却したところ、控訴人のみが控訴した。 【争点】 控訴審での争点は、①控訴人による本件資料3〜5各一式の交付の有無、②営業上の信用を害する虚偽事実の告知の有無(特に、被控訴人のガス料金値上げが「輸入価格と無関係」とする記載の真実性)、③差止めの必要性、④控訴人の故意・過失の有無、⑤被控訴人の損害額である。控訴人は、顧客宅で交付したのは名刺等の一部のみで防戦資料本体は交付していないこと、一部顧客について輸入価格と連動しない値上げがある以上「輸入価格と無関係な値上げ」という記載は虚偽ではないこと、顧客の切替え判断は料金の安さが決め手であり信用毀損の実害はないことを主張した。 【判旨】 知財高裁は、控訴人の控訴を棄却し、原判決を維持した。交付の有無については、各資料にホチキス留めの跡や折り目があること、控訴人が交付を争わない書面と争う書面との間に内容の共通性・一体性が認められることから、本件資料3〜5は一体として顧客に交付されたと推認できると判断した。虚偽性については、本件料金推移表のとおりの値上げをたどった顧客の存在を示す証拠は一切提出されておらず、被控訴人のガス料金はガスの輸入価格と概ね連動していると認められることから、「輸入価格と無関係な値上げ」との摘示事実は虚偽であると認定した。一部顧客について個別事情を考慮した値上げがあったとしても、マクロ的にみて輸入価格と連動している以上、虚偽性の認定は左右されないとした。営業上の信用毀損については、本件摘示事実はLPガス契約締結にあたり顧客の関心が最も高いガス料金に関する内容であるから、被控訴人の営業上の信用を害するものであり、実際に切替えを撤回する顧客の割合等は判断を左右しないと判示した。以上から、不正競争防止法2条1項15号の不正競争行為に該当するとして、差止請求および220万円の損害賠償請求を認容する原判決は相当であると結論づけた。