住居侵入,強盗致傷被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、暴力団組員の知人Aらと共謀の上、平成29年11月27日午前2時頃、北海道内の水産業者方に侵入して現金2億円が入った金庫を奪おうとし、実行役2名が玄関ガラスドアを叩き割って侵入、当時74歳の家人に対しバールで左足等を数回殴るなどして反抗を抑圧しようとしたが、被害者に抵抗されて金品強奪の目的を遂げず、その暴行により被害者に加療約2週間の左大腿挫創等の傷害を負わせたとして、住居侵入・強盗致傷罪で起訴された事件である。 犯行の発端は、被告人の父が、同年11月10日に札幌市内の居酒屋で被告人らに対し、被害者方に現金2億円入りの金庫や数百万円の入った巾着袋があること、力の強い漁師がいることなどの情報を伝えたことにあった。これを受けて、暴力団H組組長Aを中心に、被告人、組若頭C、密接関係者D・Eらが計画を練り、Dが暴力団組員以外から実行役3名を手配し、他人名義の車を用意するなどの準備を進めた上、同月17日に1度目の実行を試みたが事故や現場状況により見送られ、同月26日夜に準備を整え直して本件犯行に及んだ。 被害者方の調査、実行役の選定、犯行道具(バール、結束バンド)の準備、待機場所での指示連絡など、組織的かつ計画的な犯行であった。 【争点】 被告人を除く共犯者らが本件犯行を行ったこと自体には争いがなく、争点は被告人が共犯者らとの間で強盗の意思を通じて犯行に関与した共同正犯といえるか(共謀の成否)であった。弁護人は、被告人は父から盗みに入れる場所の情報を伝え聞いたに過ぎず、同月17日未明の計画会議にも同月26日夕方の最終会議にも参加しておらず、犯行当夜は待機場所を提供して眠っていただけであって、共犯者らとの意思の連絡はなかったと主張した。 裁判所は、共犯者C及びDの公判供述の信用性を、客観的な通話履歴、ホテルへの入退室記録、被告人父の情報提供経緯などと照らして検討した上で、両者の供述が重要な点で一致し、「手を後ろに回して親指同士を結束バンドで縛る」「月をまたぐと船の購入に金庫の金が使われてしまう」といった体験者でなければ語り得ない真実味のある内容を含んでおり、刑が確定しているCには被告人に罪を負わせる動機もないとして、高い信用性を認めた。他方、被告人の供述については、毎日のようにAらと特殊詐欺を繰り返していた密接な関係にもかかわらず犯行計画の核心部分だけを聞いていないというのは不自然であり、1度目の実行に関与しながら約10日後の本件当夜には隣で指示を出すCの会話も聞かずに眠っていたという弁解も不合理であるとして排斥した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人は計画段階から本件犯行に積極的に関与し、Aにも異を唱え得る立場で被害者をバールで殴って結束バンドで縛るという重要な実行方法を提案し、同月26日には実行をためらうAを「まず行ってみましょう」などと説得して実行を決意させ、犯行時には指示役としてCとともに実行役に最終的な実行指示を下したと認定し、被告人は主導的立場で本件犯行に関与した共同正犯であって、その果たした役割はAより軽いもののCより重いと評価した。 その上で、本件は暴力団組織を背景とする組織的・計画的犯行であり、未明に玄関ガラスドアを叩き割って侵入し高齢被害者をバールで複数回殴打するという危険かつ悪質な犯行態様であること、被害者は金品こそ奪われなかったものの軽くない傷害を負い強い恐怖感を抱いたこと、被告人が犯行を否認して不合理な弁解に終始し反省が認められず態度が狡猾であることなどを踏まえ、前科のないことや共犯者らとの刑の均衡も考慮して、求刑懲役8年に対し、被告人を懲役7年6月に処し、未決勾留日数中110日を刑に算入した。