AI概要
【事案の概要】 本件は、「コンクリートスラブ・床・道路・舗装等の建造物の修理工事」等を指定役務とする登録商標(以下「本件商標」)について、原告及びメインマーク株式会社が商標登録無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めた事案である。 原告は、Mainmarkグループのオーナーであり、同グループは1988年にオーストラリアで設立された関連会社を中心に、ニュージーランド、日本(メインマーク株式会社)等でウレタン樹脂の注入による小規模建築物の液状化対策工事を手掛けてきた。同グループは、「mainmark」の欧文字からなる商標(引用商標2)を用い、2011年のニュージーランド地震で被災したクライストチャーチ・アート・ギャラリーの震災復旧工事も施工している。 一方、被告は、かつてメインマーク社(当時の商号「メインマーク・ジャパン株式会社」)の設立時代表取締役であったが退任し、競業会社であるアップコン株式会社を設立した。メインマーク社が平成27年7月1日に現商号「メインマーク株式会社」へと商号変更した約56日後の同年8月25日、被告は「mainmark」と同一の本件商標の登録出願をし、平成28年2月に設定登録を受けた。原告らは、本件商標が商標法4条1項7号、10号、15号、19号に該当すると主張して無効審判を請求したが、特許庁はいずれにも該当しないとして審決で請求を退けた。 【争点】 本訴訟の争点は、引用商標2に基づく商標法4条1項19号該当性の判断の誤りの有無である。具体的には、(1)引用商標2が本件商標の登録出願時及び登録査定時においてニュージーランドの需要者の間に広く認識されていたといえるか(外国周知性)、(2)被告に競業他社排除等の「不正の目的」があったかが問題となった。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を棄却した。外国周知性について、商標法4条1項19号が適用されるためには、引用商標が外国の需要者の間で業務に係る役務表示として広く認識されるに至ったこと、すなわち自他役務識別機能を獲得していたことが必要であり、これはグループ企業自体が知られていたかどうかとは別個の問題であると判示した。 その上で、①引用商標2がニュージーランドにおいてMainmarkグループの役務について具体的にどのように使用されていたのか、使用態様を認めるに足りる証拠はないこと、②売上高を記載したグループ法人経理長作成の書面は、作成日付や経緯が不明で原資料も示されず、通常業務として作成された会計資料とは認められず信用性が低いこと、③クライストチャーチ・アート・ギャラリーの震災復旧工事の施工事実やアワード受賞の事実、アメリカの業界誌・ニュージーランドの協会誌の記事等も、引用商標2の具体的使用態様を示すものではないことから、引用商標2がMainmarkグループの役務表示としてニュージーランドの需要者に広く認識されていたとは認められないと判断した。 周知性が認められない以上、不正の目的の有無を判断するまでもなく本件商標は商標法4条1項19号に該当せず、同号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはないとして、原告の請求を棄却した。本判決は、4条1項19号の外国周知性の認定において、企業グループ自体の知名度ではなく、当該商標の具体的使用態様に基づく自他役務識別機能の獲得が必要であることを明確にした点に実務的意義がある。