観察処分期間更新決定取消請求、訴えの追加的変更申立て控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成29行コ315
- 事件名
- 観察処分期間更新決定取消請求、訴えの追加的変更申立て控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2019年2月28日
- 裁判種別・結果
- その他
- 裁判官
- 後藤博、湯川浩昭、後藤博
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、オウム真理教(教祖・松本智津夫)の後継団体の一つである「ひかりの輪」(被控訴人)が、公安調査庁長官により行われた観察処分期間の更新決定の取消しを求めた行政訴訟の控訴審である。 オウム真理教は、平成7年の地下鉄サリン事件・松本サリン事件という無差別大量殺人を引き起こしたため、平成11年に制定された「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」(団体規制法)に基づき、平成12年に観察処分に付された。その後、教団は「アレフ」「Aleph」と名称変更を重ね、観察処分の期間更新決定が繰り返されてきた。 被控訴人は、平成19年にAlephの代表者であったAらがAlephを脱退して設立した団体で、「脱麻原」「反麻原」を標榜し、哲学教室への改編を掲げるなど、オウム真理教からの決別を主張していた。しかし公安審査委員会は、平成27年1月、被控訴人がAlephと共にオウム真理教の後継団体「本団体」を構成するとして、観察処分の期間更新決定(本件更新決定)を行った。 被控訴人はこれを不服として、本件更新決定の取消しを求めたところ、原審(東京地裁)は被控訴人の請求を認容し、本件更新決定のうち被控訴人を対象とした部分を取り消した。これに対して国(控訴人)が控訴した。 【争点】 主な争点は、被控訴人が本件更新決定の対象団体である「本団体」に含まれるか、すなわち被控訴人が観察処分を受けたオウム真理教との同一性を有するか否かである。被控訴人は、松本個人や松本への絶対的帰依を否定し、「脱麻原」「反オウム」の諸改革を実行しており、オウム真理教とは基本的性質を異にする別団体であると主張した。これに対し国側は、被控訴人の「脱麻原」は外形的なものにすぎず、実質的にはオウム真理教の教義を承継する「麻原隠し」にすぎないと反論した。 その他、団体規制法5条1項1号の「首謀者の影響力」該当性、同3号の「役職員の存在」、同項所定の観察処分継続の必要性の有無なども争点となった。 【判旨】 東京高裁は、原判決中の控訴人敗訴部分を取り消し、被控訴人の請求を棄却した。 裁判所は、被控訴人がAlephの構成員が中心となって設立され、出家構成員の全員と他会員の6割以上が両サリン事件当時からのオウム真理教構成員であり、人的連続性が強いことを認めた。組織形態についても、位階制度廃止の表明にもかかわらず実質的にオウム真理教の位階制度を基礎とした体制を維持していると認定した。 さらに、被控訴人が設立時から本件更新決定時まで、松本を象徴するシヴァ神の化身とされる大黒天やミシャグチ神への崇拝を継続していること、松本が説いた衆生救済のための「タントラ・ヴァジラヤーナ」や「マハームドラーの修行」といった教義を維持していること、オウム真理教の修行体系の本質的部分である「四つの柱」(教学・功徳・行法・イニシエーション)を承継していることを指摘した。 その上で裁判所は、被控訴人が表面上「脱麻原」「哲学教室への改編」を標榜していても、オウム真理教の教義を真に廃止したとは認められず、本件更新決定時において、被控訴人は本件観察処分対象団体と同じ「麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め、これを実現すること」という特定の共同目的を有し、同団体との同一性を認められると判断した。 そして、松本が団体の首謀者として被控訴人に影響力を有していること、正大師の地位にあったAが被控訴人の主幹者であること、出家制度等により社会との隔絶性・閉鎖性が認められ、報告義務違反の事実もあることから、団体規制法5条1項1号・3号該当性及び観察処分継続の必要性を認め、本件更新決定を適法と判断した。 本判決は、団体規制法における「団体」概念の解釈や、分派・改称した後継団体への観察処分の及ぶ範囲について判示した重要な判決である。