養子縁組無効確認請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30受1197
- 事件名
- 養子縁組無効確認請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2019年3月5日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄自判
- 裁判官
- 宮崎裕子、岡部喜代子、山崎敏充、戸倉三郎、林景一
- 原審裁判所
- 高松高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、亡Bを養親、亡Cを養子とする養子縁組が平成22年10月に届出されたところ、亡Bから全相続財産の包括遺贈を受けた原告(被上告人)が、当該養子縁組は無効であるとして、検察官を相手方に無効確認を求めた事案である。亡Bは亡C及びその実姉の叔父の妻であり、原告は亡Cの実姉の夫(すなわち亡Cの義兄で2親等の姻族)という関係にあった。原告は亡Cから遺留分減殺請求訴訟を提起されており、養子縁組が無効となれば亡Cは亡Bの相続人の地位を失うことになるため、本件訴訟を提起するに至った。亡Cの死亡後は、その妻(上告補助参加人)が遺留分減殺請求訴訟を承継している。 【争点】 養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者が、当該養子縁組の無効確認の訴えにつき「法律上の利益」を有するといえるか否かが争点となった。民法上、養子縁組無効の訴えは縁組当事者以外の者も提起できるが、その範囲については、当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受ける者に限られるとするのが最高裁昭和63年3月1日判決以来の判例法理である。原審は、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有し遺留分減殺請求を受け得ることから身分関係上の地位に直接影響を受けるとして原告適格を肯定したが、その判断の当否が問われた。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、原告の控訴を棄却した。遺贈は遺言者の意思表示により受遺者に財産権を与えるものであるから、養親の相続財産全部の包括遺贈を受けた者は、養子から遺留分減殺請求を受けたとしても、それは当該養子縁組が無効であることにより自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎず、身分関係に関する地位に直接影響を受けるわけではないと判示した。したがって、全部包括遺贈を受けたことから直ちに養子縁組無効の訴えにつき法律上の利益を有するとはいえず、本件で原告は亡Bとの間に親族関係がなく、亡Cとの間にも2親等の姻族という関係があるにすぎないため、本件訴えは不適法であるとした。本判決は、昭和63年判例の「身分関係に関する地位への直接の影響」という基準を維持し、相続・遺贈による財産的影響はこれに含まれないことを明示した点に実務的意義がある。人事訴訟における原告適格を厳格に画し、身分関係の安定と遺留分減殺等の財産的救済手段とを峻別する姿勢を示したものといえる。