特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 薬剤分包用ロールペーパに関する特許権及び商標権(本件各商標権)を有していた原告が、被告株式会社ネクスト及び被告株式会社ヨシヤに対し、①商標法36条に基づく販売差止め・製造設備の廃棄、②特許法102条2項、商標法38条2項、民法709条・719条に基づく損害賠償、③予備的請求として不当利得返還を求めた事案である。被告製品は、原告が顧客に販売したロールペーパの使用済み中空芯管(原告製・所有権留保あり)を回収し、これに非純正の薬剤分包用シートを巻き直して販売するもので、中空芯管には原告の本件商標が型押しで刻印されていた。 【争点】 主要な争点は、①被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(特に構成要件A「用いられ」の意義)、②本件特許の有効性(新規事項追加、サポート要件・明確性、分割要件違反の有無)、③中空芯管上の刻印が商標として使用されているといえるか(視認可能性、指定商品該当性、商標法26条1項6号の抗弁)、④差止めの必要性、⑤損害額(102条2項・38条2項による推定、消滅時効、推定覆滅事由)、⑥被告らの共同不法行為の成否、⑦不当利得の額である。 【判旨】 大阪地裁は、物の発明である本件発明における構成要件Aの「用いられ」は、構成要件B以下のロールペーパ等の構造・機能を特定するためのものであって、現実に該当装置で使用されることを要件とする趣旨ではないと解し、被告製品は本件発明の技術的範囲に属すると認定した。無効事由に関する被告らの主張はいずれも排斥した。商標権侵害についても、中空芯管上の刻印は包装を解けば需要者に視認可能であり、芯管と分包紙が一体となった薬剤分包用ロールペーパ全体の出所表示機能を有するから指定商品に含まれ、非純正品である旨の表示があっても商標的使用に当たり、商標法26条1項6号の抗弁は成立しないとした。もっとも平成26年11月以降、被告らは販売を中止しウェブサイトも削除しており、製造設備は第三者に委託していたから、差止め・廃棄の必要性は否定した。損害賠償については、平成25年8月1日以前分は消滅時効が完成したとし、同日以降分につき被告ネクストに415万6644円、両被告に連帯して71万6378円を認容した。時効完成分は不当利得の成立を認め、実施料率3%(特許)・1%(商標2件合計)を基礎に、被告ネクスト82万7818円、被告ヨシヤ47万4242円の返還を命じた。さらに両被告は取引的・人的に密接な関連性があり一体として事業を行っていたとして共同不法行為の成立も肯定した。本判決は、純正品の使用済み部品を再利用して非純正品を販売する業態における特許権・商標権侵害の成否と、時効完成分の不当利得処理の枠組みを示した点で実務的意義を有する。