AI概要
【事案の概要】 札幌市中心部の大通公園西6丁目区画内の園路で、東から西へ歩行していた原告と、公園内に自転車で乗り入れ西から東へ走行していた参加人とが衝突し、原告が頚椎捻挫等の傷害を負った事故が発生した。本件公園は札幌市設置の都市公園であると同時に市道として供用されている道路でもあり、札幌市都市公園条例6条7号により自転車を含む車両の乗り入れが禁止されていた。公園の管理は指定管理者である被告協会が担っていた。 原告は、本件公園には自転車の乗り入れを物理的に防止する車止めが設置されず、禁止を明示する看板や路面標示も不十分で、条例違反に対する過料の取締りも行われていないなど、自転車の乗り入れ防止措置が不十分な瑕疵があったと主張し、公園管理者である札幌市に対し国家賠償法2条1項に基づき、指定管理者である被告協会に対し民法717条1項に基づき、連帯して治療費・休業損害・逸失利益・慰謝料等合計約1684万円の損害賠償を請求した。 【争点】 国賠法2条1項及び民法717条1項にいう営造物・工作物の「瑕疵」、すなわち通常有すべき安全性の欠如が認められるかが中心的争点となった。具体的には、物理的に自転車進入を阻止する車止めの未設置、「自転車は押して通行して下さい」との本件ステッカーの文言・貼付枚数の当否、条例違反への過料の周知・取締りの不足、車両通行止め道路標識の未設置などが、本件公園の構造・用途・利用状況に照らして安全性の欠如を構成するかが問題となった。 【判旨】 裁判所は、営造物・工作物の瑕疵の有無は、構造・用法・場所的環境・利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきとの最高裁判例を踏まえ、本件公園は園路が平坦な直線で見通しが良く、幅員約6メートルが確保され、11区画に分断されて各出入口に車止めポールが設置されているなどの構造上、自転車が高速走行することには自ずと限度があり、人身事故発生の危険性が高い公園とはいえないと判断した。そのうえで、被告らは本件ステッカー貼付・黄色看板設置・ホームページでの注意喚起・職員巡回時の指導など複数の乗り入れ防止措置を講じており、相応の対策が取られていたと認定した。 さらに、物理的阻止型の車止めが全国の公園で標準装備となっているとはいえず、観光名所としての景観や通行の円滑性との調整が必要であること、自転車法3条・11条は抽象的責務・努力義務にすぎず具体的措置義務を課すものではないこと、本件公園は道路法46条1項・道路交通法8条1項による通行禁止道路ではないため車両通行止め標識の設置義務もないこと、ポイ捨て等防止条例と同等の過料取締りを本件条例違反にも行う法的義務はないことをそれぞれ指摘し、原告の主張をいずれも排斥した。本件事故は、参加人が前方に原告を視認しながら擦れ違えると軽信して漫然と直進した過失により生じたもので、公園の有する危険性が現実化したものとはいえないとして、瑕疵を否定し、原告の請求をいずれも棄却した。 本判決は、都市公園が道路としても供用される特殊な事案において、管理者に求められる安全確保義務の水準を、景観・観光利用・通行の円滑性とのバランスや、自転車運転者自身の注意義務の存在を踏まえて画定した事例として、公の営造物管理責任の外延を示す実務的意義を有する。