AI概要
【事案の概要】 本件は、「噴出ノズル管の製造方法並びにその方法により製造される噴出ノズル管」とする特許(特許第4958194号。請求項1〜3)の特許権者である原告が、本件特許の無効審判(無効2014-800187号)において、請求項1及び3に係る発明の特許を無効とした審決の取消しを求めた事案である。 本件特許については、被告が「本件発明は被告が発明したものであるのに、発明者でない原告が自己名義で出願した」として冒認出願(平成23年法律第63号による改正前の特許法123条1項6号)を理由に無効審判を請求した。特許庁は当初これを不成立とする一次審決をしたが、知的財産高等裁判所は平成29年1月25日、請求項2は原告が発明者と認められるが、請求項1及び3については原告が発明者と認められないとして、一次審決のうち請求項1及び3に係る部分を取り消す判決(一次判決)を言い渡し、同判決は上告不受理決定を経て確定した。 特許庁は再開後の審判で一次判決の拘束力に従い、請求項1及び3の特許を無効とする本件審決をし、原告がその取消しを求めた。 【争点】 原告は、一次判決後に発見・提出可能となった新証拠(原告・被告間の打合せ録音反訳、原告が作製していたプレゼンテーション資料、被告側関係者の主張変遷を示す文書等)によれば、本件発明1及び3の真の発明者は原告であることが明らかであり、新証拠に基づく事実認定には一次判決の拘束力は及ばない、また一次判決は被告らの虚偽陳述等に基づくもので民事訴訟法338条1項6号・7号の再審事由があるから拘束力を認めるべきでない、と主張した。他方、被告は、平成4年4月28日最高裁判決の趣旨に照らし、従前の主張の補強や確定判決を左右する類の新証拠提出は許されないと反論した。争点は、取消判決(一次判決)の拘束力が及ぶ範囲と、再度の審決取消訴訟において新証拠に基づき同一の無効理由につき異なる事実認定を求めることの可否である。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。 取消判決の拘束力は、判決主文を導き出すのに必要な事実認定及び法律判断に及び、再度の審判ではこれに抵触する認定判断は許されず、拘束力に従った審決は適法である(最高裁平成4年4月28日第三小法廷判決参照)。当事者は、拘束力の及ぶ事実認定を覆すため、新たな証拠を提出して異なる事実を立証することも許されない。 本件において一次判決は、本件発明1及び3につき原告が発明者であるとは認められないと認定して一次審決の該当部分を取り消し、確定した。本件訴訟における原告の主張は、いずれも同一の無効理由(冒認出願)に関し、一次判決の当該事実認定を補強ないし覆そうとするものに過ぎず、許されない。 再審事由の点については、民事訴訟法338条1項ただし書及び同条2項の要件に関する主張立証を欠き、また原告の指摘する録音中の被告・Aの発言内容や陳述書の記載をみても、一次判決の基礎となった被告の審判手続における陳述等が虚偽であるとは認められず、偽造・変造を裏付ける証拠もない。したがって拘束力を排除すべき再審事由も認められない。 本判決は、特許無効審判に関する審決取消訴訟の確定判決の拘束力について、平成4年最高裁判決の枠組みを再確認したものであり、同一の無効理由の下では新証拠による事実認定の蒸し返しが封じられることを明示した点で、審決取消訴訟実務上の意義を有する。