AI概要
【事案の概要】 本件は、特許出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求めた訴訟である。原告は、「ローコスト多用ソーラーパネル」(後に「ローコスト化とそれによるデメリットをメリット化するソーラーシステム方法」に補正)と称する発明について特許出願をしたが、進歩性欠如を理由に拒絶査定を受け、不服審判請求も成り立たないとの審決を受けた。本願発明は、ソーラーパネルを構成するセル素子を円形のウエハのまま切断せずに組み合わせ、ウエハ間の空白部分から日光を通過させて天窓・縦窓・流体加熱・野菜栽培を可能とすることを特徴とするソーラーシステムである。審決は、公知文献(特開2001-7376号公報。甲1)に記載された太陽電池パネル材の発明と、略円形の半導体ウエハをそのまま用いて低コスト化を図る周知技術(甲2、甲3)を組み合わせれば、当業者が容易に本願発明に想到し得たと判断した。 【争点】 本願発明と甲1発明の一致点・相違点の認定の当否、及び進歩性判断の当否である。特に、本願発明の「天窓、縦窓、流体加熱、野菜の栽培を成し得る」との構成要件が、4つの用途すべてを可能とする一つの構成を意味するのか、それとも流体加熱手段や野菜栽培手段をそれぞれ構成要素として備えるものを意味するのかが、請求項の解釈上の中心的争点となった。 【判旨】 知財高裁は原告の請求を棄却した。本願発明の「天窓、縦窓、流体加熱、野菜の栽培を成し得る」との文言は、ウエハ間の空白部分から日光を通過させる一つの構成において、4つの用途すべてを可能にするものを指すと解される。明細書を参酌しても、本願発明はソーラーパネルの用途についての可能性を記載したにとどまり、「流体を加熱する手段」や「野菜を栽培する手段」を独立の構成要素として備えるものではない。そうすると甲1発明は、透明ガラス板材を用いて光を透過させ、屋根材・窓材として使用し得るものであるから、本願発明と同様に4用途を可能にする構成を備えている。残る相違点は、セル素子を「ウエハのまま」「切断せずに」組み合わせる点であるが、略円形の半導体ウエハを切断せずに用いて材料ロスを減らし低コスト化を図ることは甲2・甲3に示される周知技術であり、太陽電池パネルの低コスト化は一般的課題であるから、甲1発明に周知技術を適用することは当業者にとって容易である。したがって本願発明は進歩性を欠き、審決の判断に誤りはない。本判決は、請求項中に並列的に列挙された用途表現の解釈について、文言構造と明細書記載から一体的な構成を要求する解釈指針を示した事例として、実務上の意義を有する。