AI概要
【事案の概要】 本件は、「キリンコーン」の片仮名を茶色で縁取り、内側を黄色で表した商標(指定商品・第31類「とうもろこし」)について、キリングループの親会社である原告が、「キリン」「KIRIN」「麒麟」等のキリングループ商標(引用商標)と類似し、かつ出所混同のおそれがあるとして無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告が商標法4条1項11号(類似商標)および15号(出所混同)該当性を主張して審決の取消しを求めた事案である。被告は、旭山動物園にちなんで「ライオンコーン」「白くまコーン」等と並ぶ一シリーズとして本件商標を付したとうもろこしを販売している農産物業者であった。 【争点】 本件の主要な争点は、(1)本件商標から「キリン」部分を要部として分離抽出できるか、(2)本件指定商品「とうもろこし」の範囲に「野菜」と「穀物」のいずれが含まれるか、(3)引用商標の指定商品(米、豆、野菜、冷凍野菜、加工野菜、穀物の加工品等)と本件指定商品が類似するか、の3点である。 【判旨】 知財高裁は、結合商標の分離観察に関する最高裁判例(昭和38年・平成5年・平成20年判決)を踏まえ、「コーン」は指定商品「とうもろこし」を意味する英語「corn」の片仮名表記として識別力が低く、「キリン」部分は取引者・需要者に強く支配的な印象を与えるから、要部として抽出できると判断した。「キリン」からは引用商標と同一の称呼および「想像上の動物」「ウシ目キリン科の哺乳類」の観念が生じ、両商標は類似するとした。 また、商標法施行令別表が第31類を「加工していない陸産物」と定め、改正省令が「とうもろこし(穀物)」「とうもろこし(野菜)」の双方を例示していることから、本件指定商品には両者が含まれると解し、米・豆・野菜・冷凍野菜・加工野菜・穀物の加工品と同一または類似の商品に当たると認めた。被告が「かに太郎」の屋号で販売している等の取引の実情は現在の限定的販売形態にすぎず、誤認混同のおそれを否定できないとして、商標法4条1項11号該当性を認め、審決を取り消した。本判決は、識別力の低い商品普通名称を含む結合商標における要部抽出の基準と、商品区分内に複数概念が併存する場合の指定商品の範囲解釈を明確に示した点で実務的意義を有する。