AI概要
【事案の概要】 原告は宇治茶とコーヒー豆をブレンドしたドリップバッグ商品「京茶珈琲」を販売する京都の食品会社であり,図形部分と文字部分「TeaCoffee」から成る結合商標(第30類「茶,コーヒー,茶入りコーヒー,コーヒー豆」を指定商品とする)について商標登録を受けていた。被告アサヒ飲料は,平成30年4月から「ワンダ TEA COFFEE」の名称で,カフェラテにほうじ茶を組み合わせたペットボトル飲料を販売し,商品ラベルやウェブページに「TEA COFFEE」の二段書き等の標章を使用した。原告は,被告の標章使用が原告商標権を侵害するとして,不法行為に基づき損害金3300万円及び遅延損害金の支払を求めた。 【争点】 主たる争点は,原告商標と被告使用標章の類否であり,とりわけ原告商標中の「TeaCoffee」の文字部分を要部として抽出し得るか,すなわち同文字部分が自他商品識別力を有するかが中心的論点となった。その他,商標権の効力制限の有無,商標法4条1項16号による登録無効の抗弁の成否,損害額も争われた。 【判旨】 請求棄却。裁判所は,まず「Tea」「Coffee」はいずれも日本において茶・コーヒーを意味する語として一般に認識されており,両語を接続した表記は,需要者・取引者に原材料を組み合わせた飲料を意味すると認識されるにとどまると判断した。加えて,原告商品の販売開始以前から,日本コカ・コーラ,JT,ファミリーマート等の著名業者が「抹茶カフェオレ」「グリーンティーコーヒー」「ほうじ茶珈琲」等の茶とコーヒーを組み合わせた飲料を販売しており,「TeaCoffee」の表記も商品の品質(内容)ないし原材料を直接的に示すにすぎず,自他商品識別力を欠くとした。さらに原告は原告商品の販売を通じて「TeaCoffee」が識別力を獲得したと主張したが,原告自身が「京茶珈琲」「TEA×COFFEE」を含む原告使用標章2を目立つ形で使用してきた実情に照らせば,「TeaCoffee」は独立の自他商品識別標識として認識される形で使用された頻度が低く,識別力の獲得は認められないとした。結論として,原告商標は図形部分と文字部分が一体となって初めて識別力を有するものであり,文字部分のみを要部として抽出することはできない。被告使用標章は原告商標の図形部分を備えておらず,識別力を欠く文字部分が共通するにすぎないから,両者は類似しないとして,その余の争点を判断するまでもなく原告の請求を棄却した。 本判決は,記述的な結合語の商標登録がなされた場合における要部認定のあり方について,指定商品に関する取引の実情を丹念に検討したうえで識別力の有無を判定した事例であり,複数の原材料名を組み合わせた商品名をめぐる商標実務の指針となる。