九州朝高生就学支援金差別国家賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、学校法人福岡朝鮮学園が設置・運営する九州朝鮮中高級学校高級部(九州朝鮮高校)に在籍していた原告らが、文部科学大臣が「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(支給法)施行規則1条1項2号ハ(ハ規定)を削除し、同時に九州朝鮮高校についてハ規定に基づく指定をしない旨の処分(本件不指定処分)をしたことが、支給法の委任の趣旨・憲法13条、14条、26条・各種国際人権条約に反するなどとして、国に対し国家賠償法1条1項に基づき各11万円の損害賠償を求めた事案である。原告らは、ハ規定削除による期待権侵害や、本件申請から処分までに要した審査期間の長期化が行政手続法に反することなども主張した。 【争点】 主たる争点は、①本件不指定処分が文部科学大臣の裁量権を逸脱・濫用した違法なものか、②ハ規定削除が支給法の委任の趣旨に反し違憲・違法か、③本件処分が政治・外交的配慮によるものとして違法か、④ハ規定削除による期待権侵害の成否、⑤本件申請から処分までの約2年3か月の審査期間が行政手続法6条・7条に違反するかである。 【判旨】 福岡地裁小倉支部は、原告らの請求をいずれも棄却した。裁判所は、本件規程13条が「就学支援金の授業料債権への確実な充当」と「法令に基づく適正な学校運営」を指定要件とした点について、支給法2条1項5号及びハ規定の委任の範囲内で定められた有効な規定であり、その適合性判断は教育行政に通じた文部科学大臣の専門的・技術的裁量に委ねられていると判示した。そのうえで、公安調査庁の公表資料や国会答弁から、朝鮮総聯が朝鮮高級学校の教育内容・人事・財政に影響を及ぼしている疑いがあり、審査会でも本件規程13条適合性について積極的意見が出されなかったことを踏まえ、十分な確証を得られないとして不指定とした文部科学大臣の判断に裁量権の逸脱・濫用はないと結論づけた。また、下村大臣の発言等から政治・外交的配慮がうかがわれる点については、本件規程13条適合性が認められない以上いずれにせよ不指定処分を免れず、直ちに違法とはならないとした。期待権侵害の主張については、原告らは支給法の規定のみで具体的権利を付与されているわけではなく抽象的地位を有するにとどまるとして退けた。さらに、平等権侵害については、人種・信条等を理由とする扱いではなく、適正な学校運営への疑義に基づく合理的な取扱いであるとし、憲法14条・26条や各種国際人権条約違反も認めなかった。審査期間の長期化についても、北朝鮮による延坪島砲撃に伴う手続停止や調査の必要性から致し方ないものとして、行政手続法違反を否定した。