強盗殺人,有印私文書偽造・同行使,詐欺
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、中国にいる元同居女性のもとへ渡航したいと考えていたが、日本での在留資格を失っていたため、他人名義のパスポートを入手する目的で、小中学校の同級生であるA(当時29歳)を殺害して身分証等を奪うことを計画した。被告人は、平成26年3月22日朝、大阪市内のA方において、ペティナイフでAの胸部・腹部等を多数回突き刺して殺害し(多発刺創に基づく出血性ショック死)、現金約6000円及びクレジットカード2枚を含む財物(時価合計約8万2400円)を強取した(強盗殺人)。さらに被告人は、同年4月下旬から5月上旬にかけて、A名義のクレジットカードを不正使用し、ペットホテル、ホテル宿泊、衣料品店の3か所で、A名義の承諾書やクレジット売上票を偽造・行使して、A本人になりすまし、サービス提供や商品の交付を受けた(有印私文書偽造・同行使、詐欺3件)。犯行後、被告人はA名義のパスポートで中国に渡航し、平成29年1月に日本へ引き渡された。 【争点】 被告人が解離性同一性障害を有していたことは鑑定上認められ、弁護人は、犯行当時、別人格が主として行動を支配し、主人格による行動制御ができなかったとして、行動制御能力が著しく欠けていた心神耗弱の疑いがあると主張した。また、平成29年3月19日以降に作成された犯行の経緯・動機を詳細に述べる供述調書の信用性も争点となった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人の供述経過や被疑者ノートの記載等から、被告人は逮捕当初から正直に話したい気持ちを持ちつつ弁護人の助言等で供述を悩み、徐々に不利益事実を認めるに至ったものであり、3月19日以降の調書の内容はそれに対応する記憶を伴う信用性の高いものであると認定した。責任能力については、被告人が目的に従ってパスポート入手のために計画的にAを殺害し、源泉徴収票等を奪取し、犯行発覚を防ぐ行動を継続していたことから、善悪の判断能力及び行動制御能力が著しく低下していたとは認められないとした。鑑定人が主人格によるコントロール不能を述べる点についても、主人格と別人格は完全には解離しておらず記憶も共有していたことから、犯行時の精神状態自体に行動制御能力が認められる以上、さらに主人格による制御可能性を問題にする必要はないと判示し、完全責任能力を肯定した。量刑面では、パスポート不正取得のため落ち度のない被害者を殺害した身勝手で計画性の高い犯行であること、在留資格の問題は非難を減殺しないこと、遺族の処罰感情が極めて厳しいこと、犯行後にも利得目的の詐欺等を重ねていることを指摘し、解離性同一性障害の影響も大きく考慮することはできないとして、酌量減軽の事情は認められず、無期懲役に処した(求刑どおり、未決勾留日数300日算入、偽造部分没収)。