AI概要
【事案の概要】 原告は、近畿財務局長に対し、情報公開法に基づき、国が学校法人森友学園に賃貸し後に売却した大阪府豊中市の土地に関する「賃貸契約時までに提出された小学校の設立趣意書」等の開示を請求した。近畿財務局長は、森友学園が提出した「開成小学校設置趣意書」のうち、表題の一部(小学校名)及び本文部分について、同法5条2号イ所定の不開示情報(法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報)が記録されていることを理由に一部不開示決定をした。その後、近畿財務局長は管財人の意見を踏まえ本件不開示決定を撤回し、全部開示する決定をしたが、原告は、不開示決定が国家賠償法上違法であるとして、国に対し損害賠償として111万9800円余の支払を求めた。 【争点】 (1)近畿財務局長等が設置趣意書の小学校名及び本文を不開示としたことの国家賠償法上の違法性、(2)故意・過失の有無、(3)損害の有無及び額。 【判旨】 裁判所は、本文部分について、森友学園の独自の知見に基づく教育理念・教育方針等を示すものではあるが、記載は概括的・抽象的にとどまり、運営・経営上のノウハウと評価し得るものは含まれず、同様の内容は児童募集等に当たって既に実質的に公にされていたと認定した。また、森友学園は本件不開示決定時点で既に小学校設置認可申請を取り下げ、再生手続開始決定も受けていたことから、将来同様の小学校を設置する現実的可能性は低く、模倣による競争発生の蓋然性もなかったと判断した。小学校名「開成」についても、既存の学校名として公知であり、他の学校法人が先んじて使用・商標登録する可能性は抽象的なものにとどまると判断した。以上から、本件不開示部分の情報はいずれも情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当しないとした。 さらに、公文書の不開示決定に取り消し得べき瑕疵があっても直ちに国賠法上違法となるわけではなく、公務員が通常尽くすべき注意義務を尽くさず漫然と決定をしたと認められる場合に限り違法と評価されるとの最高裁平成18年4月20日判決の枠組みを前提に、本件では健全な社会通念に照らして合理的に判断すれば不開示情報に該当しないとの結論に容易に至り得たとして、職務上の注意義務違反を認定し、過失も肯定した。損害については、別件取消訴訟の提起を余儀なくされた精神的苦痛に対する慰謝料5万円、弁護士費用相当額5000円の合計5万5000円の限度で請求を認容し、別件訴訟の印紙代・郵券代相当額の請求は民訴法の訴訟費用確定手続によるべきとして排斥した。本件は、情報公開法5条2号イの不開示情報該当性の判断枠組みを示すとともに、情報公開行政における担当者の注意義務の具体的内容を明らかにした事例として意義を有する。