AI概要
【事案の概要】 原告は、平成25年4月24日に合同会社の新設分割子法人として設立され、決算日を4月30日とする株式会社である。原告は、設立翌日の同月25日、福岡市内の土地・建物等を代金7億円で購入する売買契約を締結し、同時に手付金1000万円を支払った。残代金6億9000万円は同年5月30日に支払われ、同日、建物の引渡し、所有権移転登記、根抵当権設定登記がされ、司法書士報酬も同日支払われた。賃料収入や固定資産税等も同月30日を境に帰属が分配された。 原告は、平成25年4月24日から同月30日までを本件課税期間とする消費税等の確定申告において、本件建物取得代金と司法書士報酬を同課税期間の課税仕入れに算入し、多額の還付申告をした。これに対し行橋税務署長は、「課税仕入れを行つた日」(消費税法30条1項1号)は本件建物の引渡日である5月30日であり、本件課税期間に属さないとして更正処分および過少申告加算税賦課決定処分をした。原告がこれらの取消しを求めたのが本件である。 【争点】 (1)本件建物取得および司法書士報酬に係る「課税仕入れを行つた日」が本件課税期間に属するか、(2)処分が信義則に反するか、(3)更正処分の理由提示に不備があるか、(4)国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるか。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、消費税法30条1項1号にいう「課税仕入れを行つた日」とは、事業者が他の者から資産を譲り受けた場合における課税資産の譲渡等がされた時をいい、それは譲渡人の下で生じた付加価値が譲受人に移転することが確定した時、すなわち権利確定主義の下で課税資産の譲渡等に係る権利義務が確定するに至った状態が生じた日を指すと解した。固定資産の譲渡については、契約上の所有権移転時期のみならず、代金支払の約定および実際の支払状況、引渡し状況、危険負担の移転時期、果実収受権および経費負担の移転時期、所有権移転登記の時期等を総合考慮し、当該資産の現実の支配がいつ移転したかを判断すべきとした。 本件では、代金全額の支払・建物の引渡し・所有権移転登記が平成25年5月30日にされ、賃料収入の帰属および固定資産税等の負担も同日を境に移転していることから、現実の支配が移転したのは5月30日であり、本件課税期間(4月24日から4月30日まで)には属しないと判断した。司法書士報酬についても、登記申請の役務提供が完了した5月30日が基準となるとした。さらに、消費税法基本通達9-1-13ただし書は引渡日認定が困難な場合の補充規定にとどまり、本件のように引渡日が明確な事案には適用されないから、信義則違反も成立せず、理由提示も必要最小限度の要請を満たしており、税理士関与の下でされた誤った認定につき納税者の責めに帰することのできない客観的事情は認められないとして、「正当な理由」の存在も否定した。 本判決は、消費税における仕入税額控除のタイミングを権利確定主義に基づいて判断する枠組みを示し、短期の課税期間を利用した還付目的の申告に対して実質的支配の移転時期で判定する姿勢を明らかにした実務上重要な判断である。