損害賠償請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成29受1492
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 裁判年月日
- 2019年3月18日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄自判
- 裁判官
- 小池裕、池上政幸、木澤克之、山口厚、深山卓也
- 原審裁判所
- 名古屋高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 死刑確定者として名古屋拘置所に収容されている原告(被上告人)が、同拘置所長の定めた遵守事項(以下「本件遵守事項」)に違反したことを理由に、所長・職員から指導や懲罰等の措置を受けたことについて、当該措置が違法であると主張し、国に対し国家賠償法1条1項に基づく慰謝料等の支払を求めた事案である。 問題となったのは、本件遵守事項20項(許可なく物品を製作・加工等してはならない)および26項(許可された用紙以外に許可なく書込みをしてはならない)に基づき、(1)便箋つづりに添付された吸取紙への書込み、(2)未使用封筒を半分に切断して切手保管袋としたこと、(3)便箋つづり台紙への書込み、の3件について、廃棄指導・戒告・閉居5日の懲罰・国庫帰属処分が科された点である。 【争点】 刑事収容施設法74条2項8号は金品の「不正な」使用等の禁止を列挙するところ、同項に基づき定められた本件遵守事項20項・26項が、文言上「許可なく」の加工・書込みを一律に禁止している点が、同法の委任範囲を超え違法となるか、また被収容者の行為が一般社会で通常行われる態様であって不正目的のおそれがない場合にまで規制が及ぶことの適否である。 【判旨】 最高裁は原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の控訴を棄却した。刑事収容施設法74条2項各号は遵守事項策定の概括的基準を列挙するにとどまり、具体的な定め方は、刑事施設の規律・秩序の適正維持に必要な限度を超えない限り、施設内実情に通じた刑事施設の長の合理的裁量に委ねられていると判示した。 その上で、同項8号にいう「不正」とは刑事施設の規律・秩序を害するおそれの有無から判断すべきものであり、物品の加工や許可用紙以外への書込みは一般に不正連絡等に用いられ得る行為であって、事後的規制のみでは実効性確保が困難である一方、事前の個別許可制とすることにより、所長が不正の有無を事前判断でき、職員も許可の有無という明確な基準で判断できるとした。これらの要請は死刑確定者でも異ならないから、本件遵守事項20項・26項は必要かつ合理的な範囲にとどまる適法な定めであり、これに基づく指導・懲罰等の措置も国家賠償法上違法とはいえないと結論付けた。 本判決は、刑事施設長の遵守事項策定権限に広い裁量を認めるとともに、「不正」の意味を結果的評価ではなく事前規制の必要性を踏まえた施設秩序保護の観点から捉えた点に実務的意義がある。被収容者処遇をめぐる訴訟において、画一的禁止規定の合憲性・適法性判断の基準を示す先例となる。