AI概要
【事案の概要】 被相続人が死亡し、共同相続人である控訴人らが相続税の申告及び修正申告をしたところ、処分行政庁が財産評価基本通達(評価通達)に基づき相続財産である複数の土地を評価し直し、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため、控訴人らがその取消しを求めた事案である。控訴人らは、本件1土地は標準的画地規模に比して広大であること、本件2ないし4土地は一体利用が前提となるべきこと等を根拠に、評価通達ではなく不動産鑑定評価基準(本件報告書における開発法)に基づく評価額こそが適正な時価であると主張した。原審が請求をいずれも棄却したため、控訴人らが控訴し、控訴人Aは当審で請求を拡張した。 【争点】 相続税法22条にいう「時価」の算定について、評価通達に基づく評価によらず、不動産鑑定評価基準に基づく鑑定評価額によるべき「特別の事情」が認められるか否かが主たる争点である。具体的には、(1)本件1土地について、広大地評価の不適用が土地細分化に要する諸費用の減価を反映せず客観的交換価値を把握できないとして特別の事情に当たるか、(2)本件2ないし4土地について、最有効使用の観点から一体評価すべきか、それとも相続開始時の利用状況に即して個別評価すべきかが問われた。また、控訴人Aが当審で拡張した請求部分(申告・修正申告額を下回る部分の取消請求)の適法性も争われた。 【判旨】 東京高裁は、評価通達による画一的な評価方法が合理性を有することを前提に、これによることが著しく不適当と認められる特別の事情がない限り、評価通達に従った評価が相続税法22条の「時価」を上回らないと推認されるとの原審の判断枠組みを維持した(最三小判平成29年2月28日民集71巻2号296頁を引用)。本件1土地については、控訴人らの主張は土地の細分化に要する費用の減価や鑑定評価の許容性を述べるにとどまり、評価通達によることができない特別の事情を基礎付けるものではなく、かつ本件報告書の鑑定評価額自体が客観的交換価値としての適正な時価と認められないと判示した。本件2ないし4土地についても、時価は相続開始時の現況利用状況を前提に算定すべきであり、仮定的な最有効使用に基づく一体評価を前提とする本件報告書の評価額は採用できないとし、個別評価につき特別の事情を認めなかった。さらに、市街化農地である本件5土地についても、道路新設による潰れ地の発生が認められない以上、広大地評価に該当しないとした。控訴人Aが当審で拡張した申告額を下回る部分の取消請求については、更正の請求手続を経ていないことから訴えの利益を欠き不適法として却下し、その余の控訴をいずれも棄却した。本判決は、評価通達の画一的適用を原則とする相続財産評価実務において、「特別の事情」が例外的に限定的にしか認められず、納税者が独自の鑑定評価により評価通達の適用を覆すことは容易でないことを改めて示したものとして、相続税実務上の意義を有する。