AI概要
【事案の概要】 本件は、金地金取引の代金として銀行から引き出された多額の現金を強奪する計画に関わった被告人が、共犯者9名と共謀の上、平成29年4月20日に福岡市内の駐車場で、現金運搬者Kに対して顔面に催涙スプレーを噴射する暴行を加え、その反抗を抑圧して現金3億8400万円在中のスーツケース1個を強取し、その際同人に約5日間の治療を要する刺激物質性接触皮膚炎及び化学物質性急性気管炎の傷害を負わせたとして、強盗致傷罪に問われた事案である。また、同月14日及び19日に同じ場所で催涙スプレー及びスタンガンを携帯して待ち伏せた各行為について、強盗予備罪の成否も争われた。被告人は実行グループを統括する立場にあり、共犯者の勧誘、犯行道具・車両の調達、犯行現場の下見、実行役への指示、奪取後の現金運搬等に主導的に関与していた。 【争点】 争点は、①被告人と他の共犯者らとの間に強盗の共謀が認められるか、②被害者が負った傷害が刑法240条前段の「負傷」に該当し強盗致傷罪が成立するか、③本件犯行前の2回の待ち伏せ行為について強盗致傷罪とは別個に強盗予備罪が成立するかである。弁護人は、被告人は被害者も「ぐる」であり出来レースだと思い込んでいたとして強盗の故意を否認し、また傷害の程度が軽微で強盗致傷罪は成立しないと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、周到な犯行準備、被告人を介して伝達された計画内容、実行役ら複数の共犯者供述の一致等から、被告人が被害者から現金を強奪することを当然に認識しており強盗の共謀が認められると認定した。傷害については、診断された接触皮膚炎及び気管炎が「負傷」に該当することは明らかとした。待ち伏せ行為については、同じ会社・同じ場所・同一の犯行計画の下、手段と関与者も共通しており、全体として1個の強盗に向けた継続的意思の下に行われたものとして、強盗致傷罪に吸収され別途強盗予備罪は成立しないとした。量刑上は、被害金額が3億8400万円と巨額で財産的損害が極めて大きいこと、被告人が実行グループのリーダー格として終始主導的に関与し相当額の報酬を得たと推察されること、白昼繁華街での犯行が社会に与えた衝撃、被害弁償の不存在、責任を共犯者に転嫁する不合理な弁解、別罪での服役直前の犯行という遵法意識の欠如を重く評価し、求刑懲役16年に対し懲役15年の実刑を言い渡した。組織的・計画的強盗に対し実行グループ統括者としての重い責任を認定した事例である。