AI概要
【事案の概要】 原告(スポーツ用品メーカーのプーマ社)が、被告の保有する商標(「SHI-SA」の文字と跳躍する四足動物の図形を組み合わせた商標。指定商品は第25類のTシャツ・帽子)について、商標法4条1項7号(公序良俗違反)に該当するとして登録無効審判を請求した事案である。特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めて提訴した。原告は、被告商標が原告の著名商標「PUmA」(横長枠内の欧文字+跳躍する動物図形)の顧客吸引力にただ乗りするパロディ商標であり、不正の目的で出願されたものであって、著名商標の希釈化・名声毀損を招き国際信義にも反すると主張した。 【争点】 被告商標が商標法4条1項7号(公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標)に該当するか。具体的には、著名な引用商標との類似性、引用商標の顧客吸引力に便乗する不正の目的の有無、いわゆるパロディ商標として公序良俗違反とすべき事情があるかが争われた。 【判旨】 請求棄却。知財高裁は、まず4条1項7号の適用は、登録を社会が許容すべきでないといえるだけの反社会性が認められる場合に限られるとの一般論を示した。その上で、両商標の外観・観念・称呼を対比し、全体構成(横長枠内の欧文字+右上方の跳躍動物図形)に共通点はあるものの、文字部分「SHI-SA」と「PUmA」の違い、「OKInAWAn ORIgInAL」等の下段文字の有無、動物図形の首飾り・巻き毛模様・尻尾の形状等の差異から、外観の違いは明瞭であると判断した。観念についても、被告商標からは沖縄の獅子像「シーサー」の観念が生じるのに対し、引用商標からは「ピューマ」又は「PUMA」ブランドの観念が生じるとし、称呼も相違するとした。類似しない以上、顧客吸引力へのただ乗りや出所表示機能の希釈化・名声毀損のおそれも認められず、不正の目的で出願されたとはいえないと結論付けた。また、原告の消費者調査は動物図形のみを対象とするもので本件商標の評価には直結せず、使用例1~5も本件商標自体の使用態様とはいえないとして排斥。著名商標であることを理由に不正目的の立証責任を転換することは相当でなく、本件商標に反社会性は認められないとして、4条1項7号該当性を否定した。本判決は、パロディ商標に対する公序良俗規定の適用範囲について、商標法の私益保護規定(4条1項10号・15号等)との役割分担を前提に、同項7号の適用を厳格に限定する立場を改めて示したものとして、実務上重要な意義を有する。