AI概要
【事案の概要】 本件は、スポーツ用品大手のプーマ社(原告)が、沖縄のシーサーをモチーフとした「SHI-SA」商標(指定商品・Tシャツ、帽子。被告の登録商標)について、プーマの著名商標(引用商標)と類似し商標法4条1項11号・15号・7号に該当するとして無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告が審決取消しを求めた事件である。原告は、右上方へ跳躍する四足動物のシルエットと横長長方形内の欧文字という基本構成が共通すること、世界的に著名なPUMAブランドの顧客吸引力に便乗する意図(いわゆるフリーライド・パロディ)があることを主たる理由として、審決の取消しを求めた。 【争点】 争点は、本件商標が(1)引用商標と類似し出所混同を生じさせるか(4条1項11号)、(2)広義の出所混同を生じさせるか(15号)、(3)公序良俗に反する商標といえるか(7号)である。とりわけ、動物図形と欧文字とを組み合わせた結合商標において、文字部分の相違をどの程度重視すべきか、また著名商標のパロディ的利用について7号違反をどこまで広く認めるかが中心的問題となった。 【判旨】 知財高裁(第2部)は、原告の請求をいずれも棄却した。まず外観につき、「SHI-SA」の文字列と下段の「OKINAWAN ORIGINAL GUARDIAN SHISHI-DOG」の文字群が商標全体の大きな面積を占めることを重視し、文字部分が出所識別機能を発揮しないとする原告主張を排斥した。観念は「シーサー」と「ピューマ/PUMAブランド」で明確に異なり、称呼も相違すると認定。動物図形も、本件商標は首飾り・巻き毛状の模様・丸みを帯びた尾等シーサー本来の特徴を備えているのに対し、引用商標は全体が黒いシルエットで尾が細くしなる形状であり、全体として相紛れるおそれはないと結論づけ、4条1項11号該当性を否定した。15号についても、類似性を欠き出所混同のおそれを生じさせないとして否定。原告が援用した消費者アンケート(動物図形のみを提示)は文字部分を欠く点で本件商標との差異が大きいとして、認定を左右しないと退けた。 7号については、同号の適用は登録を社会が許容すべきでないだけの反社会性が認められる場合に限られると枠組みを示した上で、使用例1〜5は本件商標そのものとは構成が異なり登録商標の使用例とは評価できず、被告が引用商標の著名性を知り得たとしても本件商標が引用商標と類似しない以上、フリーライド目的の採択は認定できないとした。また、著名商標を理由に不正目的の立証責任を転換することは相当でないとして、パロディ規制を拡張すべきとの原告主張も斥けた。本判決は、結合商標の類否判断において文字部分の比重を軽視しない姿勢を示すとともに、商標法4条1項7号を一般条項として機能させつつもその適用を厳格に限定する知財高裁の立場を示した実務上重要な事例である。