生命身体加害誘拐,逮捕監禁,傷害,詐欺
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が、知人であるA(当時21歳)から出資金名目で金銭の交付を受けていた関係を利用し、平成28年12月から平成29年2月までの約2か月間にわたり、7回にわたって金銭借用名目や示談金立替金名目などで合計3654万2000円を騙し取った詐欺事件(第1の1〜7)と、共犯者R、S、Tと共謀の上、平成30年2月23日、資金運用の依頼名目で被害者U(当時28歳)を呼び出し、同居人が話したがっているなどと嘘を言って室内に誘い入れ、その両手首・両足首を緊縛した上で黒色手提げバッグに詰め込んで行動の自由を奪い、その顔面を拳で複数回殴打して全治約3週間を要する顔面打撲等の傷害を負わせた生命身体加害誘拐、逮捕監禁、傷害事件(第2の1〜3)の併合事件である。なお、バッグ内に詰め込まれた被害者は連れ去られた後に死亡している。 【争点】 被告人及び弁護人は、生命身体加害誘拐(第2の1)について、被告人には生命身体加害目的がなく正犯意思もないから幇助犯にとどまると主張し、また傷害(第2の3)についても、被告人自身は被害者に暴行を加えておらず正犯意思がないから幇助犯にとどまると主張した。したがって、被告人の加害目的の有無及び正犯意思の有無(共同正犯と幇助犯の区別)が主たる争点となった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人がRからの依頼に応じて計画を承諾し、SやTをRに引き合わせ、LINEで「自分にも少しどつかせてください」と送信するなどRの害意を認識していたこと、犯行前日にT方のガラステーブルの片付けや防犯カメラへの目隠しを指示していたことなどから、抵抗する被害者への暴行を想定した準備行為を主導していたと認定し、共犯者との意思連絡と加害目的を肯定した。傷害については、被告人自身が殴打した事実は認定できないものの、被害者の身体を押さえ付けるなど物理的実力行使に及び、報酬の約束の下に積極的かつ主体的に関与して必要かつ重要な役割を果たしたとして、いずれも共同正犯の罪責を免れないとした。量刑判断においては、4人がかりで拘束し暴行を加えた上でバッグに詰め込むという犯行態様が人格を無視した残忍なものであること、被害額が3654万余円と多額で弁償の目途もないこと、被害者が連れ去り後に死亡している重大な結果、被告人がRに次ぐ重要な役割を担ったことを重視する一方、前科がない点等を酌量し、求刑懲役10年に対し、懲役8年(未決勾留日数中250日算入)を言い渡した。共同正犯における正犯意思の認定にあたり、計画への関与態様・指示の内容・報酬の約束・事後の利得分配といった一連の事情を総合考慮する実務的判断を示した事例である。