固定資産評価審査決定取消請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30行ヒ262
- 事件名
- 固定資産評価審査決定取消請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2019年4月9日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄差戻
- 裁判官
- 戸倉三郎、岡部喜代子、山崎敏充、林景一、宮崎裕子
- 原審裁判所
- 名古屋高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 三重県志摩市内の2筆の土地(本件各土地)の固定資産税の納税義務者である原告が、志摩市長により土地課税台帳に登録された平成27年度の価格(本件各登録価格)を不服として、志摩市固定資産評価審査委員会に審査の申出をしたが棄却されたため、被告を相手にその取消しを求めた事案である。 本件各土地は、隣接地に所在する株式会社ササヤマが開設したショッピングセンター(本件商業施設)の開発行為に伴い、三重県知事による開発許可の条件として、排水調整の必要がなくなるまで調整機能を保持することが義務付けられた調整池の用に供されてきた土地である。本件土地1はその面積の80%以上に常時水がたまっており、本件土地2は大半が調整池としての機能を有する平地であるが、平時は本件商業施設の従業員駐車場として使用されている。 志摩市長は、本件各土地の地目をいずれも宅地と認定した上、市街地宅地評価法により路線価を基礎とし画地計算法を適用して本件各登録価格を決定した(本件土地1につき108万0450円、本件土地2につき480万2400円)。これに対し原告は、本件各土地の現況及び利用目的に照らし、その地目はいずれも池沼と認定されるべきであると主張した。 【争点】 本件各土地の地目を宅地と認定した上で算出された本件各登録価格が、地方税法388条1項に基づく固定資産評価基準によって決定される価格を上回るものではないとした原審の判断の適否。具体的には、開発許可条件により調整池として機能保持を義務付けられた土地が、宅地である商業施設の敷地を「維持し、又はその効用を果たすために必要な土地」に該当するか否かが問題となった。 【判旨】 最高裁は、原判決を破棄し、本件を名古屋高等裁判所に差し戻した。 まず、土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合には、客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず、その登録価格の決定は違法となるとの従前の判例(最判平成25年7月12日民集67巻6号1255頁)を確認した。 その上で、評価基準は土地の地目の別に評価方法を定めており、地目は当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、土地全体としての状況を観察して認定するとされているところ、宅地とは建物の敷地のほか、これを維持し、又はその効用を果たすために必要な土地をも含むと解されるとの解釈を示した。 そして、開発許可に調整池の機能保持という条件が付されていることは本件各土地の用途が制限を受けることを意味するにとどまり、調整池の機能は一般的には開発対象地区への降水を一時的に貯留して下流域の洪水を防止することにあると考えられることから、上記条件に従って調整池の用に供されていることから直ちに、本件各土地が本件商業施設の敷地を維持し、又はその効用を果たすために必要な土地であると評価することはできないと判示した。したがって、本件土地1の80%以上に常時水がたまっていることなど本件各土地の現況等を十分に考慮することなく、開発許可条件のみを理由に本件各土地を宅地である商業施設の敷地維持に必要な土地とした原審の判断には、固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとした。実務上、開発に伴う調整池用地の固定資産評価について現況重視の判断枠組みを明示した重要な判例である。