政務活動費返還請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、東京都杉並区の住民である被控訴人らが、杉並区議会議員であるA議員が平成26年度に杉並区から交付を受けて支出した政務活動費の一部が本件条例及び本件規程に違反する違法な支出であると主張し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、杉並区の執行機関である控訴人に対し、A議員への不当利得返還請求をすること等を求めた住民訴訟の控訴審である。原審は、パソコン関連費用の一部、区政報告関連費用の一部及び会派区政報告(本件会派報告)製作料5万円について請求を一部認容したが、控訴人がこれを不服として控訴した。原判決言渡後にA議員はパソコン関連費用及び区政報告関連費用を返還したため、当審における審判対象は、A議員が所属する杉並区議会C党(本件会派)が平成27年1月に発行した会派区政報告の製作料5万円が違法支出に当たるか否かに絞られた。 【争点】 本件会派報告の製作料5万円を政務活動費から全額支出したことが、本件条例及び本件規程に違反する違法な支出となるか否かである。具体的には、本件会派報告が政務活動としての区政報告に該当するものか、それとも3か月後に迫った杉並区議会議員選挙に向けた選挙活動ないしPRの性質を併有するものとして、少なくとも一部を按分すべきものであるかが問われた。 【判旨】 東京高等裁判所は、原判決を変更し、控訴人に対し、A議員に5万円及び判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求するよう命じるとともに、その行使を怠る事実の違法確認を認容した。その理由として、裁判所は、本件会派の会派区政報告発行実績を詳細に検討し、本件会派には本件会派報告以前に会派区政報告の発行実績がほとんどなく、その後継続的に発行されたものとの間でも表題、通し番号、レイアウト等において一見して共通性がなく、前後の会派区政報告との一体性・連続性を欠くと認定した。加えて、本件会派報告が配布された3か月後にA議員が立候補する定例の杉並区議会議員選挙が予定されていたこと、本件会派報告の記載内容が過去1年間を振り返ったものではなく前回選挙以降4年間の活動実績等を総括する内容となっていたこと、本件会派所属議員は当該選挙に強い利害関係を有していたことから、本件会派報告は「討議資料」との記載があっても読者に対する選挙に向けたPR効果を狙ったものと評価されてもやむを得ず、選挙活動としての実態を併有することが明らかであるとした。控訴人は、本件会派報告が選挙活動のために製作されたものではなく発行時期は偶然であると主張したが、裁判所は、前回選挙から4年後に定例選挙が行われることは自明であって偶然の事情とはいえないとしてこれを排斥し、また、時期による制約を設けるものではなく記載内容に基づく判断であるとして、政務活動の萎縮・停滞をもたらすものでも自治立法権を侵害するものでもないと判示した。政務活動費が使途を限定して交付される公金である以上、本件条例及び本件規程に則した行為ないし活動に基づく支出でなければこれを充てることが許されず、本件会派報告の製作料5万円全額を政務活動費から支出したことは違法であり、A議員は民法704条の悪意の受益者に該当するとして、原判決を変更のうえ同額の不当利得返還請求を命じた。