銃砲所持許可申請許可処分の義務付け等請求控|訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30行コ71
- 事件名
- 銃砲所持許可申請許可処分の義務付け等請求控|訴事件
- 裁判所
- 名古屋高等裁判所
- 裁判年月日
- 2019年4月18日
- 裁判官
- 戸田久、朝日貴浩、髙橋信幸
AI概要
【事案の概要】 原告(控訴人)は、平成29年6月20日、愛知県公安委員会に対し銃砲所持許可申請をした。しかし、同年9月22日付けで、銃砲刀剣類所持等取締法(平成29年法律第52号による改正前のもの。以下「銃刀法」という。)5条1項18号が定める、他人の生命、身体若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者に該当することを理由に不許可処分とされた。原告はこれを不服として、不許可処分の取消しと許可処分の義務付けを求めて提訴した。原審(名古屋地裁)は、義務付け請求部分を却下し、取消請求部分を棄却したため、原告が控訴した。 銃刀法は、猟銃等による危害発生の重大性に鑑み、厳格な欠格事由を定めており、同法5条1項18号は包括的な欠格事由として、家族等に対する暴力的言動等から銃砲所持にふさわしくないと判断される者を除外する機能を有している。本件では、原告の妻Aが残していたメモ帳や聞取書、A本人の証言等を通じて、原告の長年にわたる家族に対する暴力的言動が問題とされた。 【争点】 争点は主として二点である。第一に、銃刀法5条1項18号にいう「おそれ」の解釈として、将来の危害発生について具体的・現実的な可能性を要するか、それとも抽象的な可能性で足りるか。また、その判断にあたり10年以上前の事実を根拠とすることが許されるか。第二に、本件各メモ帳や聞取書、Aの証言等の証拠価値、特に原告が反対尋問におけるAの証言態度を不誠実であると主張し、また会話録音記録(隣人との面談記録)を提出してAの証言に虚偽がある旨主張した点の当否である。 【判旨】 本件控訴を棄却する。 裁判所は、まず銃刀法5条1項18号の解釈につき、同法が銃砲等による危害の重大性に鑑み国民の生命・身体等に対する危害発生の予防を重視していること、同項1号ないし17号の欠格事由も危害発生の抽象的可能性の存在を示すにとどまることから、18号にいう「おそれ」についても具体的・現実的な発生可能性までは要求されず、抽象的な可能性の存在をもって足りると判示した。また、同号の文言上10年以上前の事実を根拠とすることを否定する規定はなく、銃刀法5条の2第2項2号・3号は申請者の行為の位置付けを異にするため、これを18号の判断根拠を10年以内に限定する理由とすることはできないとした。申請書付属書類の書式も同様の限定を示すものではないとして、原審の法律解釈を是認した。 次に事実認定については、Aの証言等に具体性があること、本件メモ帳1は原告が銃の所持許可取得意向を示す以前に作成されたものと認められ、Aに虚偽・誇張の動機が認められないこと等からすれば、これらの証拠価値は高いと評価した。原告が提出した隣人との会話録音記録についても、早朝の唐突な訪問で85歳の女性に約40年前の事実を問い質したものであり、会話の大半は原告が話している内容で、隣人の発言が真意に基づくか及び正確性に疑問が残るとして、Aの証言等の信用性を損なうものではないとした。Aの反対尋問時の態度も、原告への畏怖を訴えつつ可能な限り答えようとしたものと認められ、不誠実とはいえないとした。 以上より、原告の主張はいずれも採用できず、原判決は相当であるとして控訴を棄却した。本判決は、銃砲所持許可の欠格事由該当性判断における「おそれ」の抽象的可能性解釈と、長期間にわたる暴力的言動に関する事実認定の枠組みを示したものとして、実務上の意義を有する。