特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30ネ10082
- 事件名
- 特許権侵害差止等請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2019年4月24日
- 裁判官
- 鶴岡稔彦、鶴岡稔彦
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「加熱調理器」とする特許第3895311号の特許権(本件特許権)及び被控訴人に対する一切の請求権の譲渡を受けた控訴人(アイリスオーヤマ株式会社)が、被控訴人(日立アプライアンス株式会社)に対し、被控訴人が製造販売する被告製品1及び販売していた被告製品2ないし7が本件特許の請求項1記載の発明(本件発明)の技術的範囲に属するとして、特許法100条1項・2項に基づく製造販売の差止め及び廃棄、並びに民法709条に基づき平成19年1月から平成28年12月までの損害賠償として4億1700万円及び遅延損害金の支払を求めた事案の控訴審である。本件発明は、誘導加熱を行うビルトインタイプの加熱調理器に関するもので、第1及び第2の加熱器を左右に内設した本体ケースと、その上面に設けたトッププレートと、その周囲のサッシュとを具備し、トッププレートの幅を本体ケースの幅より大きくした上で、加熱器の中心部を本体ケースの中心より外側かつトッププレートの中心より中央側に配置し、さらにサッシュとは別部材の金属板からなる補強板と断熱層を備えるといった構成を特徴とする。原審(東京地裁)は、本件発明は公然実施品1に基づき進歩性を欠き特許無効審判により無効にされるべきものであるとして、特許法104条の3第1項により本件特許権の行使ができないと判断し、請求をいずれも棄却した。 【争点】 控訴審における主要な争点は、(1)本件発明と公然実施品1との間に控訴人主張の相違点1-1(トッププレート幅と本体ケース幅の大小関係に関する差異)が存在するか、(2)公然実施品1のサッシュが構成要件Dの「補強板」に当たるか(相違点1-2の存否)、(3)公然実施品1に乙13公報記載の技術(L字金具)を組み合わせる動機付けがあり、相違点1-2’に係る構成が容易に想到できたか、(4)控訴審で新たに主張された訂正の再抗弁(トッププレートの幅と本体ケースの幅がほぼ同じものを除くとする「除くクレーム」への訂正)の成否、である。控訴人は、本件明細書の【0002】等の記載やJIS規格・主要各社のカタログ等の技術常識に照らせば、除外される「ほぼ同じもの」とはトッププレート幅約600mm・本体ケース幅550mm前後の従来製品を指し、公然実施品1(599mm/550mm)はこれに該当するため技術的範囲から外れる、と主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所第3部は、控訴を棄却した。まず構成要件Bの解釈については、特許法70条1項により技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づき定めるべきところ、同項には「幅が大きい」とあるのみでその程度を特定する記載はなく、同条2項により明細書を参酌しても具体的数値を示す記載はないとして、控訴人の限定解釈を退け、公然実施品1は構成要件Bを具備すると認定した。また構成要件Dの「補強板」該当性についても、公然実施品1のサッシュの板状部分全体がトッププレートを支えて落下衝撃に耐えるものであるから、控訴人が接着部の位置に着目して補強機能を否定する主張は前提を欠くとした。乙13公報との組合せについても、公然実施品1のサッシュは製造・保管・輸送コストが掛かることが当業者に自明であり、乙13公報のL字金具全体は「補強板」に相当する機能を果たすものと理解し得ることから、同一技術分野における当業者が製造コスト等の削減を目的として公然実施品1に乙13技術事項を適用することに困難性はなく、相違点1-2’に係る構成は容易想到であるとした。訂正の再抗弁については、本件訂正による除外範囲である「ほぼ同じもの」とは、明細書【0002】の「各幅W3、W4がほゞ同じで」との記載と加熱器中心部の位置関係から幾何学的に導かれる本体ケース側部中心部と加熱器中心部との距離DをJIS規格の公差(2~5mm)に照らして算出すると、トッププレート幅と本体ケース幅との差が最大でも約20mmを超えないものを意味すると解され、差が49mmある公然実施品1はこれに該当しない。したがって構成要件B’は両者の相違点とはならず、残る補強板に関する相違点も本件発明と同様に容易想到であるから、本件訂正発明は進歩性を欠き独立特許要件を満たさず、無効理由は解消しないとして、訂正の再抗弁を否定した。