不正競争行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、蛇口一体型浄水器とその交換用カートリッジを製造販売する原告(株式会社タカギ)が、自社製浄水器に適合する互換カートリッジをインターネット通販で販売する被告合同会社グレイスランドおよびその関連会社・代表者に対し、被告が自社ウェブサイトや商品パッケージに表示している各種記載が商品の品質を誤認させるものであり不正競争防止法2条1項14号(現在の2条1項20号)の品質誤認表示にあたるとして、同法3条1項および2項に基づく表示差止め・除去・商品廃棄、同法4条等に基づく約249万円の損害賠償を求めた事案である。 問題となった表示は5種類あり、(1)「タカギ社製 浄水蛇口の交換用カートリッジを お探しの皆様へ」との3行表示(被告表示1)、(2)「高性能・高品質」との文言(被告表示2)、(3)「良質な活性炭を吟味したうえで採用」「第三者機関の試験でしっかり除去されている事を確認済」との文言(被告表示3)、(4)(5)「カビ臭(2-MIB) 総ろ過水量800L 除去率80% JIS規格試験結果」との性能表示(被告表示4・5)である。原告は、被告カートリッジが純正品より安価なうえ性能も劣ると主張し、自ら兵庫分析センター等に試験を依頼した結果、カビ臭(2-MIB)の除去率が規格値80%を大きく下回ったと指摘していた。浄水器は家庭用品品質表示法の適用対象であり、JIS規格S3201に定められた方法で性能試験を行うこととされている点が争いの前提となっている。 【争点】 主たる争点は、被告表示1から5までが不正競争防止法上の品質誤認表示に該当するか否かである。そのほか、被告好友印刷および代表者である被告Yの共同不法行為責任の有無、被告Yの会社法429条1項等に基づく責任の有無、損害額も争われた。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 まず被告表示1については、「タカギ社製」の文言は直後の「浄水蛇口」を修飾し、全体として「タカギ社製の浄水蛇口に適合する交換用カートリッジを探している方へ」という趣旨に読むのが自然であると解し、加えて各ウェブページには「当社製品はタカギ社純正品ではございません」「同一性能を示すものではございません」との打消し表示が掲載されていることから、需要者は被告商品が原告商品ではないと認識し得たとして誤認のおそれを否定した。 被告表示2の「高性能・高品質」については、一般的・抽象的な広告文言であって客観的な基準を伴うものではなく、需要者もその性質を認識しているのが通常であること、後述のとおり高除去タイプのカビ臭除去率は80%を上回ると認められること、標準タイプは流量が多いという別の特性を有することから、虚偽の表示には当たらないとした。 被告表示3については、高除去タイプのカビ臭および農薬の除去率がJIS規格の基準を満たしていること、標準タイプと高除去タイプの活性炭の表現差は需要者に品質差を強く印象づけるものではないことから、品質誤認を生じさせる表示とは認められないとした。 被告表示4・5については、訴訟係属中に原告・被告双方が楽天市場で購入した被告商品(高除去タイプ)を同一の第三者機関(総合水研究所)に送付しJIS規格に基づく試験を行った「本件追試」において、総ろ過水量800L通水時の2-MIB除去率がいずれも95%を上回ったことが認定された。この試験は検体取得方法等を弁論準備手続で協議したうえで実施されており信用性が高いと評価し、他方で原告が示した除去率49%や77.2%との試験結果は、測定条件が異なり推計手法に根拠がないこと、購入から試験依頼まで約50日を経ており保管状況が不明であることなどから、表示が虚偽であることを基礎づけるには足りないとした。 以上により、品質誤認表示の成立が否定された結果、共同不法行為の成否や被告Yの会社法上の責任、損害額など他の争点を判断するまでもなく、原告の請求は理由がないとされた。互換品ビジネスにおける表示の許容範囲を示すとともに、性能表示の虚偽性を争う際には当事者双方の立会い下で取得された中立的な試験結果が決定的な意味を持ちうることを示した事例である。