自己情報非開示等決定取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、吹田市議会議員である原告が、吹田市長に対し、市が保有する公文書中の記載の訂正を求めた事案である。 原告は、平成28年5月の市議会定例会で、市が職員の同意を得ないまま、職員の給与減額情報を職員団体等に提供してきた点を問題視する発言をした。これを受けて市の総務部長らは、本件取扱いを変更し、今後は対象職員から同意書の提出を受けることを条件とする旨を決定し、同年8月26日付けで市職員宛てに通知文書を発出した。 その通知文書には、取扱変更の契機として「職員が直接市へ同意書を提出していない状態で、第三者である職員団体等へ給与減額情報を提供することは違法ではないのかとの指摘が市民の方からあった」と記載されていた(本件訂正前記載)。 これに対し原告は、自身の発言の趣旨は「同意書の未提出」という手続的問題ではなく「そもそも同意を得ていない」という実体的問題を指摘したものだと主張し、吹田市個人情報保護条例18条1項に基づき、「市が直接職員から同意を得ていない状態で」と訂正することを請求した。吹田市長がこれを拒否する決定をしたため、原告は本件決定の取消しと訂正決定の義務付けを求めて提訴した。 【争点】 (1) 本件訂正前記載に係る情報が条例18条1項の「事実」に該当するか。 (2) 「事実の誤り」の判断枠組みと、本件記載に事実の誤りがあるといえるか。 【判旨】 大阪地裁は、原告の請求を棄却・却下した。 まず条例上の訂正請求制度は、誤った保有個人情報が利用されることにより個人の権利利益が侵害されることを防止する趣旨であるとし、訂正対象たる「事実」とは、評価・判断そのものは含まないが、証拠等により客観的に存否を決することが可能なものを広く含むと解した。原告が当該指摘をしたか否かは客観的に判断可能であるから、本件記載は「事実」に該当する。 次に「事実の誤り」の意義について、自己情報中の事実と客観的事実とが相違する場合すべてを指すのではなく、(a)当該情報や公文書の作成・取得の経緯・目的、性質、利用状況等、(b)相違の内容・程度等を考慮した上で、誤った情報の利用により権利利益が侵害される相当程度の蓋然性が存する場合に限られるとの枠組みを示した。 本件につき、通知文書は取扱変更を職員に周知する目的で作成され、発言を逐語的に伝える目的ではないこと、発言の内容は市議会会議録で公開されていること、「同意書を提出していない状態」は読み手には「同意を得ていない状態」と同義と受け取られる可能性が高く、両者の相違点は大きくないことなどを総合し、権利利益侵害の相当程度の蓋然性は認められないと判断した。よって本件決定は適法であり、義務付けの訴えも訴訟要件を欠き却下した。 本判決は、個人情報保護条例における訂正請求の対象となる「事実の誤り」の意義について、客観的不一致だけでなく権利利益侵害の蓋然性という規範的要素を要求した点に実務的意義がある。