AI概要
【事案の概要】 本件は、廃棄物の収集処理業および肥料製造業を営む被告会社と、その代表取締役である被告人Bが、名古屋市内の工場において、水質汚濁防止法の排水基準に違反する汚水を公共用水域である名古屋港に排出したとして起訴された事案である。 水質汚濁防止法は、工場・事業場から公共用水域に排出される水の排水基準を定め、国民の健康と生活環境を保護することを目的としている。食品製造業などから出る廃棄物を処理し、動物系飼料や有機質肥料を製造する施設は同法上の「特定施設」に該当し、1日平均20立方メートルを超える排出水を出す工場は排水基準の遵守が義務付けられる。基準を超える汚水の排出には罰則が設けられており、法人と行為者の双方が処罰される両罰規定が適用される。 被告会社の工場では、搬入される廃棄物の量が施設の処理能力を大きく超える状態が続いていたにもかかわらず、被告人Bは適切な対応を怠り、工場長代理と共謀のうえ、従業員らに命じて平成30年9月7日から同年11月30日までの間に5回にわたり違法排水を行わせた。排出された汚水は、水素イオン濃度、窒素含有量、化学的酸素要求量、浮遊物質量、ノルマルヘキサン抽出物質含有量のいずれも省令および愛知県条例が定める排水基準を超えるものであった。 【判旨(量刑)】 名古屋地方裁判所は、被告会社を罰金50万円に、被告人Bを懲役6か月に処し、被告人Bについては3年間刑の執行を猶予した。 裁判所は、本件が長期間にわたって同種行為を繰り返す組織的かつ常習的な犯行であり、国民の健康や生活環境の保護という同法の趣旨に照らして生じた結果は看過できないと指摘した。そのうえで、施設運営の実権を握る立場にあった被告人Bが、処理能力を超える廃棄物受入れの現状を認識しながら適切な措置を講じず、自身の地位や会社の利益を守りたいという独善的かつ利己的な動機から安易に違法排水を継続し、さらには隠ぺい工作まで行っていた点は厳しい非難に値すると評価した。 他方で、被告会社代表者が監督不十分を真摯に謝罪し、被告人Bも公判廷で事実を認めて反省の態度を示していること、被告会社がすでに事業許可取消処分を受け相応の社会的制裁を受けていること、被告人Bの妻が出廷して今後の指導監督を誓約したこと、被告人らに前科がないことなど、酌むべき事情も認められた。 裁判所はこれらの事情を総合考慮し、検察官の求刑どおり被告会社に罰金50万円を科すとともに、被告人Bには懲役6か月を言い渡したうえで、更生の機会を与えるため今回に限り執行猶予を付すのが相当と判断したものである。