放送受信契約締結義務不存在確認請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、ワンセグ放送を受信できるカーナビゲーション(以下「本件カーナビ」)を自家用自動車に設置している原告が、NHK(被告)に対し、放送受信契約を締結する義務が存在しないことの確認を求めた事案である。原告は、自動車の保管場所である自宅敷地内ではワンセグ放送を受信できず、かつ本件カーナビはナビ用途で購入したもので放送視聴目的ではないと主張した。これに対し被告は、自動車を移動させれば受信可能な状態にあるうえ、カーナビは客観的・外形的に放送受信を目的としない設備とはいえないとして争った。放送法64条1項本文は、協会の放送を受信できる受信設備を設置した者に受信契約締結義務を課し、同項ただし書は受信を目的としない受信設備のみを設置した者を除外している点の解釈が問われた。 【争点】 第一に、衛星契約・特別契約の締結義務不存在確認を求める部分の確認の利益の有無(ワンセグでは衛星放送を受信できないため被告も争わない点)。第二に、自宅敷地内で受信できない場合でも、原告が放送法64条1項本文にいう「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に該当するか、特に「設置」の意義。第三に、本件カーナビがナビ目的で購入され現実にワンセグを視聴していない事実から、同項ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」に該当するかである。 【判旨】 裁判所は、まず衛星契約・特別契約に係る確認請求部分につき、被告が争わないため確認の利益を欠くとして却下した。次に、最高裁平成29年12月6日大法廷判決を引用し、受信料制度は受信設備を設置して放送を受信できる環境にある者に広く公平に負担を求め、現実の視聴の有無を問わない仕組みであると整理。かかる趣旨から、放送法64条1項にいう「設置」とは「受信設備を使用できる状態に置くこと」を広く意味し、保管場所一点での受信可能性に限定する解釈は公平負担の理念に反するとした。原告の自宅敷地付近ではワンセグ受信が可能と認定され、自家用自動車を通常どおり移動させれば受信可能な本件カーナビは、受信設備を使用できる状態に置かれているといえるため、原告は同項本文の設置者に該当すると判断した。また、ただし書の「放送の受信を目的としない受信設備」とは、電波監視用や店頭展示品のように客観的・外形的に受信目的でないことが明らかな場合に限られるとし、設置者の主観的意図や現実の未視聴は考慮要素とならないと判示。カーナビはワンセグ機能を搭載した汎用受信機であり客観的に受信目的でないとはいえないとして、ただし書該当性も否定した。結論として、原告には地上契約締結義務が認められ、請求は棄却された。本判決は、車載ワンセグ機器をめぐり下級審で判断が分かれていた論点について、最高裁大法廷判決の射程を踏まえて「設置」概念を場所固定的にとらえず機能的に解した点で、移動体受信設備に関する実務上の指針となる。