AI概要
【事案の概要】 本件は、拘置所に被告人として勾留されていた控訴人Aと、その弁護人であった控訴人Bが、国(被控訴人)に対し、国家賠償法1条1項に基づく慰謝料等の支払を求めた事案である。平成21年7月27日、控訴人Aは刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容されていたところ、弁護人である控訴人Bが面会を申し出たにもかかわらず、C拘置所職員はその事実を控訴人Aに告げないまま、保護室収容中であることを理由に面会を拒否した。控訴人らは、これにより接見交通権が侵害されたとして提訴した。 原審・差戻し前控訴審はいずれも請求を棄却したが、最高裁は、保護室収容中の未決拘禁者について弁護人からの面会申出があった場合、申出事実を告げられても依然として同号に該当することが明らかといえる特段の事情がない限り、申出を告げないまま面会を許さない措置は接見交通権を侵害し国賠法上違法となるとの規範を示し、上記特段の事情の有無について審理を尽くさせるため原判決を破棄・差し戻した。本判決は差戻し後控訴審の判断である。 【争点】 最高裁判決が示した「特段の事情」が本件に認められるか、すなわち、控訴人Aが精神的に著しく不安定であることなどにより、弁護人の面会申出を告げられても依然として刑事収容施設法79条1項2号に該当することが明らかであったといえるかが主たる争点である。被控訴人は、控訴人Aが職員への強い敵意から制止に従わず大声を発する行動傾向を示していたこと、公判廷でも退廷命令を受けるまで不規則発言を繰り返していたことなどから、計算の働く余地のない強固な反抗であったと主張した。 【判旨】 裁判所は、最高裁判決の規範を踏襲した上で、本件では「特段の事情」を認めることはできないと判断した。控訴人Aが保護室内で大声を発していたことは認められるものの、職員の視察・指導時に大声を出すことが多かったことから、むしろ意図的な反抗的態度であったと推認され、極度の興奮による錯乱状態にあったとは認められないとした。また、公判期日における不規則発言から、弁護人のみとの面会時の言動を推測することはできないとして被控訴人の主張を排斥した。 損害額については、接見交通権侵害の重大性や証人尋問前の重要な時期であったことを考慮する一方、既に25回もの弁護人面会が行われていたこと、第11回公判期日直前にも面会があり具体的支障が生じたとまではいえないこと、事態を招来した一因が控訴人Aの言動にもあったことなどを総合考慮し、慰謝料を各10万円と認定した。 本判決は、最高裁の規範を具体事案に適用した事例判断として、接見交通権の実質的保障を確認する意義を有する。