AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が、実子である生後約2か月の乳児Aに対し、その身体を激しく揺さぶるなどの暴行を加え、急性硬膜下血腫等の傷害を負わせて死亡させたとして、傷害致死罪に問われた事案である。 被告人は、内妻との間に生まれたAを養育していたところ、内妻の体調が優れない中でも愛情をもって育児に関わっていた。しかし、平成30年6月9日の夜は、普段以上にAの夜泣きがひどく、あやしてもなかなか泣き止まない状態が続いていた。被告人は、日頃の育児や仕事への支障等に伴うストレスを抱え込んでおり、そうした状況の中で我を忘れ、同日午後11時頃、当時の自宅(福岡県古賀市内)において、まだ首も据わっていない無抵抗のAの身体を、脳内の血管が切れるほど激しく揺さぶるなどの暴行に及んだ。 Aは急性硬膜下血腫等の重篤な傷害を負い、翌10日午前7時27分頃、搬送先の病院において死亡した。被告人は犯行直後からAの救命のための措置を施し、公判では罪を認めて後悔と反省の弁を述べた。検察官は懲役10年を求刑し、弁護人は懲役3年・執行猶予付きの科刑意見を述べた。 【判旨(量刑)】 福岡地裁は、被告人を懲役5年に処し、未決勾留日数中210日を刑に算入する旨の判決を言い渡した。 量刑の理由として、まず、まだ首も据わっていない無抵抗の乳児の身体を、脳内の血管が切れるほど激しく揺さぶり、その幼い命を失わせた結果は取り返しのつかないものであり、暴行の態様は残虐とまではいえないものの、生後約2か月の被害者に対する行為としては危険性が高いと評価した。 他方、被告人が内妻の体調が優れない中で愛情をもって養育に関わっていたこと、この日に限って夜泣きが特にひどく、日頃のストレスもあいまって突発的に犯行に及んだとみられること、養育に伴う負担が軽くなかったこと、一定期間にわたる虐待が繰り返された類型の事案とは一線を画することなど、被告人に有利な事情も指摘した。 もっとも、過去に2度乳児の養育経験がある被告人が、被害者と生活を共にした期間が僅か1か月ほどにとどまり、内妻の親族等に育児協力を求めるといった他の方策を真剣に考えないまま、何ら落ち度のない被害者に自らの感情を爆発させた経緯からすれば、相応の非難は免れないとした。 以上を踏まえ、本件を子を被害者とする単独犯の傷害致死事案の中で中程度の部類に属すると位置づけ、刑の執行猶予は考えられないと判断した上で、犯行直後の救命措置や反省の弁などの一般情状も考慮して主文の刑を定めた。