AI概要
【事案の概要】 千代田区民である参加原告が、地方自治法242条の2第1項4号に基づき提起した住民訴訟である。平成23年度に千代田区から政務調査研究費の交付を受けた4会派が、その一部を使途基準に違反して違法に支出し悪意で不当利得したのに、被告(千代田区)が返還請求権の行使を怠っているとして、各会派への不当利得返還請求および法定利息支払請求をなすべきことを求めた事案である。当初別の住民が提起した訴訟に参加原告が共同訴訟参加を申し出た後、原告側が訴えを取り下げ、参加原告の訴えのみが係属した。 【争点】 (1)本件訴えの適法性。監査請求期間制限や前件訴訟との二重起訴・既判力に抵触しないか。 (2)各支出の本件使途基準への適合性。タクシー代、会議費、書籍代、人件費、パソコン・備品購入費等について、政務調査研究活動との合理的関連性や支出の必要性をどう判断するか。 (3)使途範囲外支出について各会派が民法704条の悪意の受益者に当たるか、法定利息の起算日をいつとすべきか。 【判旨】 一部認容、一部棄却。 争点(1)について、本件監査請求は怠る事実を対象とするもので特定の財務会計上の行為の違法性判断を要しないから監査請求期間制限を受けず、本件訴えは適法である。本件条例15条2項は残余金返還(同条1項)とは別に使途範囲外支出の全額返還を定めており、前件訴訟とは支出項目が重複しない限り訴訟物を異にし、既判力にも抵触しない。 争点(2)について、使途禁止事項該当の支出は直ちに違法となり、それ以外の支出も政務調査研究活動との合理的関連性を欠くか支出の必要性の判断が合理性を欠けば使途範囲外支出に当たるとの枠組みを示した(最高裁平成22年3月23日判決等参照)。その上で、新しい千代田の議員らのタクシー代について、領収書に印字されたGPSコードから降車地を調査した結果、218枚中209枚(95.9%)で申告された降車地と実際の降車地が相違していたことを認定し、GPSコード未印字分を含めタクシー代全額97万0630円を違法支出とした。行革クラブも会計整理票に乗降地や目的の記載を欠くタクシー代1万2490円を違法とした。他方、会議費、書籍代、人件費、パソコンやついたての購入費、ICレコーダー等購入時のポイント付与分等についてはいずれも適法と判断した。 争点(3)について、各支出時点では合理的関連性を欠くことが明らかであったとはいえず悪意の受益者とは認められないが、本判決確定の日には違法であることを確定的に認識しうるから、その翌日から年5分の法定利息支払義務を負うとした。 本判決は、タクシー領収書のGPSコードという客観的証拠により虚偽申告を大規模に認定し、一部で不正が確認された場合に残部の不正も推認しうるとした点で、政務調査研究費の透明性確保の実務に重要な示唆を与える。