AI概要
【事案の概要】 本件は、宗教法人である原告(創価学会)が、経由プロバイダである被告(ニフティ株式会社)に対し、氏名不詳者らがインターネット上のレンタル掲示板「teacup.」に原告が著作権を有する写真を無断で掲載し、原告の公衆送信権(送信可能化権)を侵害したとして、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者の氏名・住所・電子メールアドレス等の発信者情報の開示を求めた事案である。 問題の写真は、平成30年8月22日付け聖教新聞に掲載された報道写真で、原告の名誉会長夫妻が原告施設に赴き、数十名の会員が施設前で夫妻に拍手をし、夫妻が車中からこれに応じる場面を、聖教新聞社報道局の職員Aが撮影したものである。氏名不詳者らは、同年8月23日と24日、同写真と同一場面の写真を掲示板に投稿し、その写真の加工・合成疑惑を主張する記事を掲載していた。 【争点】 争点は、(1)本件写真が著作物に該当するか、(2)原告が本件写真の著作権者といえるか(職務著作の成否)、(3)投稿写真が本件写真の複製に当たるか、の3点である。被告は、本件写真は単にカメラの機械的作用で被写体を記録しただけで撮影者の創意工夫がなく著作物性を欠き、職務著作の要件も客観的証拠を欠くと主張して争った。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をすべて認容した。まず著作物性について、本件写真は時間的動きと空間的広がりのある場面を効果的に表現するため、撮影アングル、シャッタースピード、タイミング、絞りなどに工夫が施されており、撮影者の個性が現れ思想感情を創作的に表現した著作物に当たると判断した。次に著作権者性については、聖教新聞社が原告の収益事業部門であり、職員Aが業務として撮影したこと、原告就業規則に「職員が職務上の行為として著作した著作物の著作権は、法人に帰属する」との定めがあることから、著作権法15条1項の職務著作として原告に著作権が帰属すると認めた。さらに投稿写真と本件写真は、人物の配置・姿勢・背景・色彩・撮影アングル等において同一であり複製に該当すると判断。以上より、送信可能化権侵害が明らかであり、原告は不法行為に基づく損害賠償請求権等を行使するため発信者情報の開示を受ける必要があるとして、発信者の氏名・住所・電子メールアドレスの開示を命じた。 本判決は、報道写真の著作物性を肯定的に評価した点、および新聞社を一事業部門とする法人の職務著作の認定について参考となる。プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求では、著作権の帰属と複製該当性の証明が実務上の要点となり、就業規則の整備が著作権者特定において重要な意味を持つことを示した事例である。