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知財

審決取消請求事件

判決データ

事件番号
平成30行ケ10123
事件名
審決取消請求事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2019年5月23日
裁判官
大鷹一郎國分隆文筈井卓矢

AI概要

【事案の概要】 原告(株式会社ドクター中松創研)は、「トンネルの構造」と題する発明について特許出願をしたが、拒絶査定を受けたため拒絶査定不服審判を請求し、あわせて特許請求の範囲を補正した。争点となったのは、出願後にされた第1次補正である。当初の請求項は「2枚の天井板をそれぞれ一端で合わせ込み、他端をトンネルの側壁に所定の角度で押しつけて構成されるトンネルの構造」というものであったが、原告は第1次補正により「合わせ込み部からトンネルの天井に排気用の隔壁を取り付けたことによりこれとトンネル天井壁で形成される複数の排気ダクトを形成し得ること」という要件を付加した。背景には、2012年の笹子トンネル天井板崩落事故を契機に、吊り金具に依存しない安全なトンネル天井構造を提案しようとする発明思想がある。特許庁は、本件補正を却下したうえで、第1次補正は当初明細書等に記載のない新規事項の追加であり、進歩性も欠くとして審判請求を不成立とする審決をした。原告はその取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 主たる争点は、第1次補正における「複数の排気ダクトを形成し得ること」との発明特定事項の追加が、特許法17条の2第3項にいう「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内」でされたものといえるか、すなわち新規事項の追加に当たるか否かである。原告は、「複数の排気ダクト」とは排気を含めた換気が可能なダクトを意味し、当初明細書の図2等が示す送風ダクトと排気ダクトの2区画構造もこれに含まれると主張した。被告(特許庁長官)は、トンネル換気の技術分野では「送気」と「排気」は明確に使い分けられる用語であり、当初明細書は送風ダクトと排気ダクトを区別して記載しているのだから、文字通り複数の「排気」ダクトと解すべきであり、当初明細書等に記載はないと反論した。 【判旨】 知財高裁第4部は、原告の請求を棄却した。裁判所はまず、他の公開特許公報等を総合し、本願出願日当時、トンネルの技術分野において「排気」と「送気」は明確に区別されており、天井・天井板・隔壁で形成される2空間をそれぞれ「排気ダクト」と「送風ダクト」として用いることが技術常識であったと認定した。そのうえで、第1次補正後の請求項にいう「複数の排気ダクト」とは「排気ダクトが複数存在すること」を意味し、排気ダクトが1つのみである構成は含まないと解釈するのが相当であるとした。当初明細書には従来構造として「一方を送風ダクト、他方を排気ダクト」とする記載しかなく、送風ダクトを排気ダクトとして構成するなど排気ダクトを複数設ける構造の記載も示唆もない。さらに、排気ダクトと送風ダクトは「対」となって換気機能を果たすものであるから、排気・送気の対からなる換気方式と、排気ダクトを複数備える方式とは技術的思想を異にするものであり、当初明細書の全記載から導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入するものといえる。したがって第1次補正は新規事項の追加に当たり補正要件を欠くとの審決の判断に誤りはなく、その余の取消事由を判断するまでもなく原告の請求は理由がないと結論した。本判決は、平成20年の「ソルダーレジスト事件」大合議判決が示した新規事項追加の判断枠組み、すなわち当初明細書等の全記載から導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入するか否かという規範を、クレーム文言の技術分野における通常の語義解釈に基づき具体的に適用したものとして、出願戦略上参考になる事例である。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。