強盗殺人,死体遺棄,電子計算機使用詐欺
判決データ
- 事件番号
- 平成31う89
- 事件名
- 強盗殺人,死体遺棄,電子計算機使用詐欺
- 裁判所
- 名古屋高等裁判所
- 裁判年月日
- 2019年5月23日
- 裁判官
- 髙橋徹、後藤隆、菱川孝之
- 原審裁判所
- 名古屋地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 被告人は、共犯者Ⓐと共謀し、知人を介して知り合った被害女性(53歳)の所持する仮想通貨(ビットコイン)等の財産を奪う目的で同女の殺害を計画した。被告人は事前にインターネットで死体の処理方法を調べ、大型の旅行鞄を用意するなどの準備を整え、平成29年6月18日、被害者を自動車に同乗させて催涙スプレーを噴射し視力を奪った上、病院に着いたと偽って降車させた被害者を荷物庫に押し込み、現金約5万円、商品券、スマートフォン、タブレット端末、暗証符号等の記載されたノートなど合計約13万円弱相当の金品を強取した。その後、滋賀県犬上郡内の河川敷付近で、被害者に馬乗りになるなどしてⒶに首を絞めさせ、被告人自身もⒶと共に情報機器の接続線で首を絞めて被害者を殺害した。被告人らは遺体を粘着テープと結束バンドで処理し、旅行鞄に入れて被告人の親族が管理する別荘に運び込み、同月20日に建設機械を用いて敷地内の土中に埋めた。さらに被告人は、同年7月3日以降、奪取したノート記載の暗証符号等を用いて被害者名義の口座から合計1.25BTCを自己名義口座に送信させ、換金して35万円余りを取得した。原審名古屋地裁(裁判員裁判)は被告人を無期懲役に処し、被告人が控訴した。 【争点】 主たる争点は、被告人の責任能力の有無および原審が精神鑑定請求を却下したことの適法性である。弁護人は、臨床心理士Ⓔ教授の心理社会鑑定書および精神科医Ⓖの意見書を根拠に、被告人に解離性障害の疑いがあり、犯行動機が理解不能で善悪判断が異常であったとして、裁判員法50条に基づく精神鑑定の請求を却下した原審の措置は証拠採否の裁量を逸脱した訴訟手続の法令違反にあたり、完全責任能力を認めた事実認定にも誤認があると主張した。その他、罪となるべき事実に実行行為者の特定がないとする理由不備・食い違いの主張や、共犯Ⓐとの刑の不均衡などの量刑不当も争点となった。 【判旨(量刑)】 名古屋高裁は、被告人に精神障害による入通院歴がなく、成育歴に解離性障害を疑わせる逸話もないこと、犯行当時の記憶に欠落がなく、Ⓐから見て普段と異なる様子もなかったこと、Ⓔ教授自身も解離症状が犯行に及ぼした影響を説明できないと述べていることなどから、原審が精神鑑定請求を却下した措置は妥当であり、裁量逸脱による審理不尽の違法はないと判断した。また、利欲目的の計画的犯行であり、被告人が目的達成に向け一貫して合理的に行動していた経過に照らせば、完全責任能力を認めた原判決に事実誤認はないとした。量刑については、死体の処理方法を事前に調査し大型旅行鞄や建設機械を準備するなど計画性が極めて高く、催涙スプレーで被害者の視力を奪い、病院到着と偽って荷物庫に押し込むなど手口が冷酷悪質であること、Ⓐに殺害行為の大半を実行させ自ら首謀・主導した主犯であること、一度断念したⒶを事情を知らせず引き入れた犯意の強固さ、被害者の苦痛・恐怖の甚大さ、遺族の厳罰感情、財産的被害の大きさなどを重く評価し、若年であることや基本的事実関係を認めていることなどの酌量事情を考慮しても、無期懲役の原判決が重過ぎて不当とはいえないとして、控訴を棄却した。