用途廃止処分無効確認等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 京都府城陽市は、市所有の土地建物上に文化ホール、こども館、図書館、歴史民俗資料館等からなる大規模複合文化施設「文化パルク城陽」を行政財産として管理・運営してきた。同施設は約178億円を投じて建設され、市債償還期限は令和8年度とされていたが、施設の耐用年数と市債償還年数とのズレから受益世代と負担世代との間の負担のギャップが大きい状態にあった。 城陽市長は、このコスト平準化を図るとともに、新名神高速道路の全線開通を契機としたプロジェクトによる一時的な資金需要に対応する目的で、いわゆるセール・アンド・リースバック方式を計画した。すなわち、建物をNTTファイナンスに代金80億円で売却し、同時に土地を25年間無償で使用させる一方、建物を同社から25年間賃借し(賃料総額約99億9000万円)、これまでどおり文化施設として運営を継続する枠組みである。市議会の議決を経て、市長は平成30年2月1日付で建物の用途廃止を行い行政財産を普通財産に変更した上、同日に売買契約・土地使用貸借契約・建物賃貸借契約からなる本件契約を締結した。 これに対し、城陽市の住民らは住民監査請求を経た上で、地方自治法242条の2に基づく住民訴訟を提起した。請求は、(1)本件用途廃止の無効確認、(2)市からNTTファイナンスへの所有権移転登記の抹消登記手続請求を怠ることの違法確認、(3)賃料支払命令の差止め、(4)土地建物の引渡請求を怠ることの違法確認の四つである。 【争点】 第一に、用途廃止処分が住民訴訟の対象となる「財務会計上の行為」に当たるか(請求1の適法性)、第二に、請求2〜4について適法な住民監査請求の前置があるか、第三に、本件用途廃止及び本件契約が地方自治法238条の4第1項(行政財産の処分・私権設定禁止)に違反して無効か、本件契約が実質的な物的担保付借入れとして地方財政健全化法を潜脱するものといえるかが争われた。 【判旨】 京都地方裁判所は、まず請求1について、行政財産の用途廃止は公共施設の使用可能性と行政内部における管理区分の変更に関する判断であって、財産の財産的価値に着目しその維持・保全を目的とする財産管理行為とはいえないとし、財務会計上の行為に当たらないとして訴えを却下した。 請求2〜4の監査請求前置については、監査請求段階で売買契約等の違法性が明確に主張されていた以上、契約履行としての登記・引渡しを怠る事実も同一の違法性を争うものとして前置要件を満たすとし、また賃料支払命令の差止めについても、25年間で99億9000万円を支払う旨が監査請求書に具体的に記載されていたから個別的・具体的な適示があったとして、いずれも適法と判断した。 本案については、市長が本件建物を公共用に供しない旨を決定し現実にも売却した以上、用途廃止の効果は生じ建物は普通財産に転換したと認定し、売却時点で行政財産ではないから地方自治法238条の4第1項違反の問題は生じないと判示した。本件契約の実体が物的担保付借入れであるとの主張に対しては、受領した80億円は売買代金であり、支払う年額約3億9960万円は建物使用の対価である賃料であって借入金の分割返済ではないとして斥け、地方財政健全化法潜脱の主張についても具体的な根拠がなく、施設運営が現に継続されている以上市長の裁量権の逸脱・濫用も認められないとした。以上により、請求1は却下、請求2〜4はいずれも棄却となった。