AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が共犯者らと共謀の上、公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、女性4名を性風俗店の人事担当者等に女性従業員として紹介して雇用させたという職業安定法違反の事案である。 職業安定法63条2号は、公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介等を行うことを禁じ、違反者には1年以上10年以下の懲役等を科す規定である。一般的な労働者派遣や職業紹介と異なり、性風俗店等への紹介が罰則の対象となる点で、風俗営業関連法規と並ぶ重要な刑罰規定として機能している。 被告人らは、各種のマニュアル等を整え、指示役、女性のスカウト役、性風俗店側への紹介役や仲介役といった役割分担のもと、1年余りの間に4回にわたって犯行を繰り返していた。具体的な手口は、スカウト役が街頭で女性に声をかけ、性風俗の仕事に興味を示した女性はそのまま店舗に紹介する一方、興味を示さない女性については、その後も繰り返し連絡を取り、食事を共にするなどして好意を抱かせた上、被告人らが運営する飲食店に誘い込み、「スカウト役と交際するためには売上に貢献する必要がある」などと述べて高額の飲食をさせ、さらに「稼げる店がある」として半ば強引に勧誘して性風俗店での就労を決意させるというものであった。紹介された女性は18歳から24歳で、中には未成年に近い者も含まれていた。 紹介先は大津市や京都市内の店舗型・無店舗型性風俗特殊営業店であり、不特定の男性客を相手に手淫、口淫等の性交類似行為をさせる店であった。被告人は、共犯者らが運営する飲食店の経理を担当し、性風俗店から支払われる紹介料等を集計して共犯者らの報酬を計算する役割を果たしていた。検察官は懲役2年6月を求刑した。 【判旨(量刑)】 京都地裁は、被告人を懲役2年6月に処し、4年間その刑の執行を猶予した。 量刑理由において、裁判所はまず、本件は役割分担を伴う巧妙な手口による組織的かつ職業的な犯行であり、約1年にわたって4回も繰り返され、公衆道徳上の有害性も顕著であると指摘した。特に、街頭での声かけから始まり、好意を抱かせた上で飲食店に誘い込み、交際を匂わせながら高額の飲食をさせて心理的に追い込んで性風俗店での就労を決意させるという手口は、若年女性の心情につけ込む悪質なものと評価された。 被告人自身の関与についても、共犯者Aらから指示を受ける立場にあったとはいえ、飲食店の経理を担当し、紹介料を集計して共犯者らの報酬を計算するなど、犯行遂行に重要不可欠な役割を果たしており、街頭で声をかけるスカウト役よりも上位の立場にあったと認定された。さらに、紹介料欲しさという利欲的な動機にも酌量の余地はないとして、犯情はかなり悪く、被告人の刑事責任は相当に重いと断じた。 他方で、被告人に有利な事情として、被告人が事実関係をいずれも認めて反省の態度を示していること、前科前歴がないこと、父親が出廷して被告人に対する指導監督を約していることなど、一般情状面での酌量要素が相応に認められた。 裁判所は、これら有利な情状を踏まえ、今回に限り社会内で自力更生する機会を与えることが相当と判断し、検察官の求刑どおり懲役2年6月を科した上で、4年間の執行猶予を付した。