AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人両名が、それぞれ共犯者らと共謀の上、平成30年1月及び3月に、京都市内のビルにおいて、無店舗型性風俗特殊営業店の人事担当者に対し、同店が女性従業員に不特定の男性客を相手に手淫・口淫等の性交類似行為をさせる店であることを知りながら、同店の従業員として就業させる目的で、当時20歳及び19歳の女性各1名を紹介して雇用させ、もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介を行ったとして、職業安定法違反(同法63条2号)に問われた事案である。 職業安定法63条2号は、公衆道徳上有害な業務に就かせる目的での職業紹介等を禁止しており、いわゆる「スカウト行為」のうち性風俗店への紹介等を処罰する規定として実務上重要な役割を果たしている。本件における被告人らの犯行は、各種マニュアル等を整備した上で、指示役、スカウト役、性風俗店側への紹介役や仲介役といった役割分担のもとに行われていた。具体的には、スカウト役が街頭で声をかけた女性に繰り返し連絡を取り、食事を共にするなどして好意を抱かせた上で、被告人ら運営の飲食店に誘い込み、スカウト役と交際するためには売上への貢献が必要であるなどと言ったり高額の飲食をさせたりした上で、稼げる店があるなどとして半ば強引に性風俗店での就労を決意させるという、巧妙な手口によるものであった。被告人両名は、それぞれスカウト役を担当していた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人両名をそれぞれ懲役1年4月(求刑各懲役1年6月)に処し、3年間その刑の執行を猶予した。 量刑の理由として、本件が組織的・職業的な犯行であり、被告人らがスカウト役として重要不可欠な役割を果たしていたこと、報酬欲しさという利欲的な動機に酌量の余地がないことを指摘し、犯情に照らして刑事責任は相応に重いとした。他方、有利な一般情状として、被害女性に相当額の示談金を支払って示談を遂げていること(ただし、職業安定法63条2号違反の罪の保護法益には社会的法益が含まれていることから、示談の点を過大視することはできないとした)、事実関係を認めて謝罪文を作成するなど反省の態度を示していること、若年で前科前歴がないこと、親が出廷して監督を約していることなどを認定した。 もっとも、犯行態様や役割の重要性等の犯情によって基礎づけられる刑事責任の重さに照らせば、罰金刑を選択するのは相当でなく、懲役刑の選択はやむを得ないとして、執行猶予付き懲役刑を言い渡したものである。本判決は、いわゆる「スカウト」による組織的な風俗店紹介事案について、保護法益に社会的法益が含まれることを理由に示談の評価を限定的に捉えた点に特徴がある。