AI概要
【事案の概要】 本件は、韓国のコンクリートポンプ車メーカーである被告が、日本で「KCP」の商標登録を受けた原告に対し、当該商標登録は商標法4条1項19号(他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするもの)に該当するとして無効審判を請求し、特許庁が無効審決をしたことから、原告が審決取消訴訟を提起した事件である。 被告は2002年に韓国で設立されたコンクリートポンプ車メーカーであり、設立以来「KCP」の標章を付したコンクリートポンプ車を製造販売してきた。被告の韓国国内市場占有率は平成24年から平成27年まで毎年30〜40%台で第1位を占め、被告商標は韓国のコンクリート圧送業界で広く認識されていた。 原告代表者は、平成24年12月に韓国の被告本社を訪問し、日本における販売代理店となることについて協議した。合意には至らなかったものの、原告代表者は当面の間、別会社を通じて被告製品を仕入れ日本国内で販売することとなった。原告代表者は平成26年7月に原告会社を設立し、被告製コンクリートポンプ車を「韓国のトップ商品」として日本国内で販売していた。 被告が平成27年1月に日本での本格展開を決定し日本人職員を雇用したことを知った原告は、同年2月18日、被告が日本で商標登録していなかったことを奇貨として、「KCP」について自ら商標登録出願を行い、同年7月に登録を受けた。その後、原告は被告日本法人等に対し商標権侵害を主張する催告書を送付したり、被告から商標権を買い取らせようとする旨を述べたりした。 被告は平成29年6月に無効審判を請求し、特許庁は平成30年10月、本件商標は商標法4条1項19号に該当するとして無効審決をした。原告は本件訴訟を提起した。 【争点】 第一に、被告が韓国の商業登記簿上の表記と異なる英語表記を使用していることから当事者能力を欠くかという点。第二に、本件商標が商標法4条1項19号に該当するか(被告商標の周知性、商標の類似性、原告の不正の目的の有無)という点が争われた。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を棄却した。当事者能力については、被告は2002年に韓国で設立された実在の法人であり、商号登記簿上の韓国語表記をどのように英語表記するかという問題と訴訟法律関係の主体として取り扱う適否は別個の問題であるとして、被告の当事者能力を認めた。 商標法4条1項19号該当性については、被告商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、韓国国内のコンクリート圧送業者等の需要者の間で被告製品を表示するものとして広く認識されていたと認定した。また、本件商標と被告商標は「ケーシーピー」の称呼が同一で外観も極めて類似し、指定商品に使用された場合に出所の誤認混同を生ずるおそれがあるとして類似性を肯定した。 不正の目的については、原告代表者が被告商標の周知性を認識しつつ、被告の日本進出の動きを知るや、被告商標が日本で未登録であることを奇貨として、被告の日本国内参入を阻止・困難にするとともに、本件商標を有償で被告に買い取らせ、あるいは販売代理店契約の締結を強制させるなどの不正の目的で出願したものと認定した。これらから本件商標は商標法4条1項19号に該当し、無効審決の判断に誤りはないと結論付けた。 本判決は、外国で周知の商標について日本での先取り出願を行う「冒認的商標登録出願」を商標法4条1項19号により無効とする類型の典型例として、実務上参考になる事例である。