源泉所得税納税告知処分取消等請求事件,更正すべき理由がない旨の通知処分取消等請求事件,源泉所得税納税告知処分取消等請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成28行ウ434
- 事件名
- 源泉所得税納税告知処分取消等請求事件,更正すべき理由がない旨の通知処分取消等請求事件,源泉所得税納税告知処分取消等請求事件
- 裁判所
- 東京地方裁判所
- 裁判年月日
- 2019年5月30日
- 裁判官
- 清水知恵子、進藤壮一郎、池田美樹子
AI概要
【事案の概要】 本件は、原告E(日本国籍を有する男性で、ラジエーター製造販売業を営む原告D社及び原告F社の代表取締役会長)が、平成21年から平成24年までの4年間について、自らを所得税法上の「非居住者」に該当すると認識して所得税の確定申告をしなかったところ、所轄税務署長から「居住者」に該当するとして期限後申告を勧奨され、これに応じて申告した後、更正の請求をしたものの更正をすべき理由がない旨の通知処分及び無申告加算税の各賦課決定処分を受けた事案である。また、原告Eに役員報酬を支払っていた原告D社及び原告F社は、Eを非居住者として20%の税率で源泉徴収していたところ、居住者であるとの前提で再計算された源泉所得税との差額について納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を受けた。 原告Eは、父が創業した国内のラジエーター部品製造販売事業を継いだ後、自らの判断と努力でインドネシア・アメリカ・シンガポール・中国に海外法人を次々と設立し、その代表者として海外展開を指揮してきた人物である。対象期間中、Eは年の大半を海外で過ごし、シンガポールの賃貸住宅を生活拠点とする一方、妻子は名古屋市内の自宅に居住し、日本国内の住民登録も残したまま、健康保険にも加入し通院も続けていた。原告らは、これら3件の処分の取消しを求めて本訴を提起した。 【争点】 原告Eが本件各年において所得税法2条1項3号にいう「居住者」(国内に住所を有する個人)に該当するか否かが中心的争点である。具体的には、Eの「住所」すなわち生活の本拠が日本国内にあったといえるかどうかが問われた。 【判旨】 東京地裁は、最高裁平成23年2月18日第二小法廷判決を引用し、所得税法上の「住所」とは生活の本拠、すなわちその者の生活に最も関係の深い一般的生活・全生活の中心を指し、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かは、滞在日数、住居、職業、生計を一にする配偶者等の居所、資産の所在等を総合考慮して判断すべきとの枠組みを示した。 その上で、Eの滞在日数は日本とシンガポールで大差なく、第三国への渡航拠点としてシンガポールが機能していたこと、Eの職業活動の実質は海外4法人の経営判断・営業・工場管理にあり、日本法人の業務は弟が実質的に担い、Eが国内業務に費やした日数は年間13〜17%に過ぎなかったことを認定した。家族の国内居住、国内資産の多さ、住民登録、国内通院等の事情も、海外赴任者の行動として不自然ではなく、生活の本拠が日本にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえないと評価した。結論として、Eの職業活動はシンガポールを本拠として行われており、Eは本件各年において「居住者」に該当するとは認められないと判断し、居住者該当を前提とした各処分はいずれも違法であるとして、原告らの請求を全部認容した。 国際的に活動する経営者の居住者性判断について、滞在日数や国内資産に偏った形式的な判断を排し、職業活動の実態に即して「生活の本拠」を認定した事例として、実務上参考となる判断である。