AI概要
【事案の概要】 プロの写真家である原告が、自身のウェブサイトに掲載していた2羽のペンギンが前後に並んで歩く写真(本件写真)の画像データを、被告が無断で加工し、米国法人Smule社が提供するオンライン・カラオケサービスの自己のアカウントのプロフィール画像として2度にわたり設定したことが、原告の著作権(複製権・自動公衆送信権)および著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)を侵害するとして、民法709条および著作権法114条3項に基づき合計168万9848円の損害賠償と遅延損害金の支払を求めた事案である。被告は、平成28年1月頃、画像検索で表示された1羽のペンギンの画像をダウンロードし、本件写真の画面右側のペンギンのみを切り出すトリミング処理をした上でプロフィール画像として使用した(侵害行為1)。その後、Smule社がインラインリンクの切断措置を講じたため同画像が表示されなくなると、同年2月18日頃、今度は本件写真の画面左側のペンギンのみを切り出してトリミング処理し、同様にアップロードした(侵害行為2)。原告は、被告を特定するためにSmule社に対する発信者情報開示の仮処分申立てや間接強制申立てを経てISPのKDDIから被告情報の開示を受けており、その過程で要した弁護士費用等の賠償も求めた。 【争点】 第一に、被告が原告の著作権および著作者人格権を侵害したか、特に被告が別物の画像を用いたとする主張の当否、インラインリンク切断後の公衆送信状態の継続性、被告プロフィール画像から本件写真の本質的特徴を感得できるか等が争われた。第二に、原告の損害額、とりわけ著作権法114条3項の使用料相当額の算定において原告独自の料金表をどこまで参酌すべきか、発信者特定のために要した仮処分申立費用・間接強制申立費用・ISP交渉費用等が相当因果関係ある損害に当たるかが争点となった。 【判旨】 裁判所は、本件写真は原告が構図・陰影・画角等に工夫を凝らし撮影した創作性ある著作物と認定した上、被告プロフィール画像は原告画像の左右それぞれのペンギンを切り抜いたものと同一であり、画像の精度や大きさは複製該当性を左右しないとして、被告の各行為は複製権・公衆送信権および氏名表示権・同一性保持権を侵害し、被告には少なくとも過失があるとした。インラインリンク切断後もURLを直接入力すれば閲覧可能であったから公衆送信権侵害状態は継続していたと判示した。各侵害行為は同一目的に基づく近接した一連の不法行為と評価した。損害額については、原告料金表は独自設定で実際の契約例が乏しいとして形式適用せず、非営利の私的利用である一方、改変の程度が大きく海外サーバにアップロードされた点等を総合考慮し、利用料相当額を年5万円とし利用期間3年分に消費税を付加した16万2000円を認容した。内容証明郵便費用2226円、本件仮処分申立費用27万円(英訳費用・資格証明書取得費用を含む)、保全執行費用10万8000円は相当因果関係ある損害と認めたが、既にログイン情報の開示を受けた後の国内ISPであるKDDIとの交渉は弁護士委任が不可欠とはいえないとしてこの費用は否定した。慰謝料10万円、弁護士費用7万円を加えた合計71万2226円と、侵害行為2の日である平成28年2月18日からの年5分の遅延損害金の支払を命じ、その余の請求を棄却した。