時間外手当請求事件,損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、一般社団法人である被告が経営する小樽掖済会病院において臨床検査技師として稼働していた亡F(平成27年12月8日に病院屋上から飛び降り自死)の相続人ら及び両親が、被告に対して提起した2つの事件である。第1事件は、亡Fの配偶者である原告A及び子である原告B・Cが、平成26年1月分から平成27年12月分までの未払時間外手当の支払を、賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6%の遅延損害金とともに求めた事案である。第2事件は、前記原告ら3名及び亡Fの両親である原告D・Eが、亡Fが被告の安全配慮義務違反により過重労働でうつ病を発症し自死に至ったと主張して、不法行為に基づき損害賠償(相続分及び固有の慰謝料等)を請求した事案である。亡Fは平成27年6月頃から電子カルテ新システム導入業務を中心的に担当するようになり、長時間労働に従事するようになった。労基署は亡Fの自死を業務災害と認定している。 【争点】 第1事件では、(1)被告就業規則53条所定の時間外手当算定の基礎となる「賃金」に救急当番手当・待機手当が含まれるか、(2)月60時間超の時間外労働に対する割増率の適用範囲(全時間外労働に及ぶか超過部分のみか)、(3)タイムカード等による労働時間の認定、技師会活動時間の取扱いが争点となった。第2事件では、(1)亡Fの自死と被告業務との因果関係(精神障害発症と業務起因性)、(2)被告の安全配慮義務違反の有無(予見可能性・結果回避可能性)、(3)損害額の算定、(4)過失相殺・寄与度減額の可否、(5)損益相殺及び労災保険法附則64条1項に基づく履行猶予額が争点となった。 【判旨】 裁判所は、救急当番手当・待機手当は所定労働時間内の労務提供の対価ではないため就業規則53条の「賃金」に含まれないとする一方、月60時間超の高割増率は超過部分のみに適用されると解釈した。労働時間はタイムカード等の記録を基準とし、始業時刻前の出勤分は業務命令と認められず除外したが、終業後の滞留時間は技師会活動分も含めて業務時間と認めた。その結果、未払時間外手当は119万9268円と算定された。第2事件では、発症直前1か月の時間外労働が概ね160時間に達する「特別の出来事」があったと認め、亡Fは業務によりうつ病を発症し自死に至ったと認定。被告は長時間労働を把握し得たにもかかわらず業務軽減措置を講じなかったとして安全配慮義務違反を肯定した。過失相殺は否定し、慰謝料2500万円、逸失利益6928万5198円等を認容。もっとも、被告が平成31年1月23日に1億0358万8443円を弁済済みであり、元本・遅延損害金の合計(約1億0287万円)を上回るため、全債務が消滅したとして、原告らの請求をいずれも棄却した。