特許権侵害差止請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、高リン血症治療薬「炭酸ランタンOD錠」に関する特許権(特許第6093829号「ランタン化合物を含む医薬組成物」)を有する原告バイエル薬品株式会社が、後発医薬品メーカーである被告ら5社(コーアイセイ、日本ケミファ、扶桑薬品工業、日本ジェネリック、コーアバイオテックベイ)が製造販売等を行う炭酸ランタンOD錠製剤が原告特許権を侵害すると主張し、特許法100条1項に基づく本件各製剤の生産、使用、譲渡等の差止めと、同条2項に基づく製剤の廃棄を求めた事案である。本件特許については、被告コーアイセイからの無効審判請求を契機に訂正請求が繰り返され、平成30年12月12日には請求項6及びその従属項を無効とする審決が出され、原告は審決取消訴訟を知財高裁に提起している。本件訂正発明(訂正後請求項6)は、炭酸ランタン又はその塩を医薬組成物中70~90質量%で含有し、崩壊剤としてクロスポビドンを5.6~12質量%含有する口腔内崩壊錠を内容とする。 【争点】 (1)本件各製剤が本件訂正発明等の技術的範囲に属するか(とりわけ、クロスポビドンを崩壊剤として含有するか、その含有率が5.6~12質量%の範囲にあるか)、(2)差止めの必要性、が主たる争点である。原告は書類提出命令(特許法105条1項)の申立てを行ったが、裁判所はインカメラ手続の結果、本件製剤1の組成物又は含有率は本件訂正発明の規定と異なる一方、当該情報は被告にとって秘密性の高い重要な技術情報であるとして、被告に提出拒絶の正当な理由を認め申立てを却下していた。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、本件各製剤が、①崩壊剤としてクロスポビドンを含有すること、②その医薬組成物中の含有率が5.6~12質量%であること、③同崩壊剤がGRANFILLER-D(登録商標)から成る錠剤でないことについて、これを認めるに足りる証拠がないと判断した。原告が主張する「本件各製剤は原告製剤の後発医薬品であること」「本件製剤1の分析によってもクロスポビドン含有を否定するデータは得られていないこと」等の点についても、後発医薬品であることから直ちに構成要件C充足が導かれるものではなく、むしろクロスポビドン含有を否定するデータが得られないという事実は、規定含有率のクロスポビドンを含有することを認めるに足りる客観的証拠が存在しないことを示すものであるとして、原告の立証が構成要件充足性について不十分であると結論付けた。よって、本件各製剤が本件訂正発明等の技術的範囲に属すると認めることはできず、その余の点(差止めの必要性)について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも棄却された。