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【事案の概要】 本件は、特許第4637825号(発明の名称「ダクトのライニング」、登録日平成22年12月3日)の特許権者であった原告ら(英国等に所在する企業5社)が、特許法112条1項所定の追納期間中に第4年分の特許料及び割増特許料を納付しなかったため同条4項により消滅したものとみなされた本件特許権について、同法112条の2第1項に基づき第4年分の特許料等を納付する旨の納付書及び回復理由書を提出したところ、特許庁長官が本件納付書による納付手続を却下したため、追納期間の徒過には同項所定の「正当な理由」があると主張して、本件却下処分及びこれに対する異議申立てを棄却する旨の決定の取消しを求めた事案である。原告らは本件特許の年金納付を英国の特許事務所(本件特許事務所)に委託していたが、本件特許事務所の担当者は、原告らから送付された注文書に特許番号の記載がなかったため、別件特許権(納付期限平成25年12月16日)に関する指示と誤認し、本件特許権については納付指示を各国担当者に伝達しなかった。 【争点】 争点1は、本件期間徒過について特許法112条の2第1項所定の「正当な理由」があるといえるか。争点2は、本件決定に固有の瑕疵があるといえるか(本件却下処分と異なる判断枠組を採用し本件特許事務所の過失のみを判断対象としたことが不意打ちに当たるか)である。 【判旨】 請求をいずれも棄却した。特許法112条の2第1項にいう「正当な理由」とは、平成23年改正により特許法条約の「Due Care(相当な注意)」概念を採用したものであり、原特許権者(手続を代理する者を含む。)において一般に求められる相当な注意を尽くしても避けることができないと認められる客観的な事情により、追納期間内に特許料等を納付することができなかった場合をいうと解するのが相当である。本件では、原告らが本件特許事務所に送付した電子メール及び本件注文書には特許番号が記載されておらず、特許番号に代替し得る本件特許権を特定するための情報も全く記載されていなかった。その理由は年金納付担当者の「気力がなかった」というにすぎず、かえって納付期間の終期が平成25年12月16日の第17年分の年金を指示するかのような記載があった。本件特許事務所が管理する原告らの特許権には納付期間の終期が同日のものも含まれており、また本件特許権について年金納付の指示をしたのであれば本件特許事務所から受領通知や請求書が送付されるはずであるのに、原告らはこれらの不送付を看過していた。したがって、原告らについて一般に求められる相当な注意を尽くしても避けることができない客観的事情があるとは認められない。本件特許事務所が世界的に有力な事務所であって体制を整備していたとしても、原告らの指示が明確であったとはいい難く、看過もあったのであるから、外部組織を適切に選任したことをもって「正当な理由」があるとはいえない。争点2については、本件却下処分は本件特許事務所及び原告らのいずれも相当の注意を払ったとはいえないことを理由とするのに対し、本件決定は本件特許事務所が相当の注意を払ったとはいえないことを理由に異議申立てを棄却したが、本件特許事務所に過失が認められることは本件却下処分の理由としても示されており、本件決定において原告らが主張していない事実が認定されたわけでもないから、不意打ちとは評価できず、裁決固有の瑕疵があるとはいえない。