発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、実演家Mr.Childrenが歌唱する楽曲を録音したレコードの送信可能化権を有すると主張する原告(株式会社トイズファクトリー)が、経由プロバイダである被告(ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めた事案である。 原告は、Mr.Childrenが歌唱する楽曲「Printing」ほか全12曲を録音した本件レコードを製作し、平成6年9月1日、「Atomic Heart」(商品番号:TFCC-88052)という商業用音楽CDに収録して日本全国で発売した。 氏名不詳者である本件発信者は、本件レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置した上、被告の提供するインターネット接続サービスを利用し、被告からIPアドレス「182.171.42.116」の割当てを受けてインターネットに接続し、平成30年11月10日午前1時15分32秒頃、ファイル交換共有ソフトウェアであるShare互換ソフトウェアにより、不特定の他の同ソフトウェア利用者からの求めに応じて同ファイルをインターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態に置き、本件レコードの送信可能化権を侵害した。 原告は、損害賠償請求権等を行使するためには発信者情報の開示が必要であるとして、本件訴訟を提起した。 【争点】 原告が本件レコードの送信可能化権を有するか、本件発信者による送信可能化権侵害の事実の有無、被告が開示関係役務提供者に該当し、本件発信者情報を保有しているかが争点となった。被告は、請求原因のうち、被告が一般利用者に対してインターネット接続プロバイダ事業等を行っている株式会社であることは認めたが、原告が本件レコードの製作・発売をした事実、本件発信者による侵害行為の事実については不知とし、その他の請求原因については不知又は争う(ただし、一般論として被告が特定電気通信役務提供者及び開示関係役務提供者に該当し得ることは認める)との態度を示した。 【判旨】 東京地方裁判所は、証拠(甲2、3、弁論の全趣旨)によれば、原告が本件レコードを製作・発売した事実及び本件発信者による送信可能化権侵害の事実が認められると判断した。 これにより、原告は本件発信者に対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有するところ、原告が本件発信者に対してその権利を行使するためには、本件発信者情報の開示が必要であるとした。 また、本件発信者に対してインターネット接続サービスを提供していた被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、証拠(甲4、弁論の全趣旨)によれば、被告は本件発信者情報を保有しているものと認められるとした。 したがって、原告の請求には理由があるとして、被告に対し別紙発信者情報目録記載の各情報(IPアドレス「182.171.42.116」を使用してインターネットに接続していた者の氏名(または名称)、住所及び電子メールアドレス)を開示するよう命じ、訴訟費用は被告の負担とした。