AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人がAから「衣装ケースの処分を手伝ってほしい」と依頼され、その衣装ケースの中にBの死体が入っているかもしれないと認識しながら、Aと共謀の上、平成30年8月9日、大阪市内のA方から兵庫県加古川市内の湖まで衣装ケースを運搬し、土嚢を結束させた上で湖中に投棄して死体を遺棄したという死体遺棄被告事件である。 被告人は、衣装ケース(縦約37センチ、横約70センチ、高さ約33センチ、内容物を含めた重量は40〜50キログラムと認識)をベニヤ板を敷いた段ボール箱に入れてガムテープで梱包し、防犯カメラのあるエレベーターを避けて非常階段で4階から1階まで運び下ろしてレンタカーに積載、80キロメートル以上離れた人気のない湖まで運搬し、夜になるまで3時間以上待った上で50キログラムの土嚢を結束させて沈めるという徹底した投棄行為に関与した。検察官は懲役2年を求刑した。 【争点】 本件の主要な争点は、被告人に死体遺棄の故意(未必的認識)があったか否かである。弁護人は、被告人は段ボール箱内に死体が入っていることを知らず、衣装ケースの中身は違法コピー商品だと思っていたのであって、故意がないから無罪であると主張した。これに対し検察官は、被告人には死体を遺棄するとの未必的な認識があったと主張した。故意の有無は、外形的な行為態様や状況から合理的に推認できるかが問題となる。 【判旨(量刑)】 神戸地方裁判所は、被告人を懲役1年6月、執行猶予3年に処した(未決勾留日数中120日を算入)。 裁判所はまず故意の有無について、衣装ケースの大きさと重量、人目を避ける梱包・運搬方法、80キロメートル以上離れた人気のない湖まで運び、夜を待って50キログラムの土嚢と結束させて沈めるという徹底的な投棄態様からすれば、被告人は「相当の大きさ及び重量があり、かつ、徹底的に人目につかないように投棄しなければならないもの」が入っていると認識していたと認定した。そして、一般常識に照らせば、このような投棄物としてまず想起されるのは人の死体であるから、当該投棄物が死体である可能性を想起しなかったとみるべき特段の事情がない限り、被告人に死体遺棄の未必的認識があったと推認できると判断した。 弁護人が主張した「違法コピー商品だと認識していた」との弁解については、そのような商品をひとまとめにして手間をかけて投棄する必要性は考え難く、被告人自身も衣装ケースの中身を確認していないことから不自然であるとして排斥。「体重の2倍の重りがなければ死体は浮き上がるから、50キロの土嚢にとどめたのは死体ではないと思っていた証左である」との主張も、信用性に疑義のある被告人供述に依拠するものとして採用しなかった。 量刑理由については、犯行態様が死体の尊厳を著しく害する悪質なものであり、被告人は道具の購入・遺棄場所の選定・運搬・遺棄行為と一連の行為に関与しており従属的とはいえないとした。他方、被告人には死体であるとの確定的認識まではなく、主体的な動機もなく主犯Aの依頼に応じたものであること、半年余りの身柄拘束があったこと、さしたる前科がないことなどを考慮し、執行猶予付きの懲役1年6月とした。