特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「薬剤分包用ロールペーパ」とする特許(特許第4194737号)の特許権者である被控訴人(株式会社湯山製作所)が、控訴人ら三社(日進医療器、セイエー、OHU)による薬剤分包用ロールペーパ(被告製品)の製造・販売行為は、被控訴人の特許権に対する間接侵害(特許法101条1号、いわゆる「のみ品」による間接侵害)に当たると主張し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の控訴審である。被控訴人の本件特許は、ロールペーパの巻径が小さくなるにつれてシート張力を段階的に調整し、シートの耳ずれや裂傷を防ぐことを目的とするもので、支持軸に設けた角度センサと測長センサの信号からシート巻量を算出し、その位置に複数の磁石を配置した構成に特徴がある。被控訴人はかつて控訴人日進による使用済み芯管への「巻き直し品」について別訴で特許権・商標権侵害の勝訴判決を得ており、控訴人らは後継品として被告製品の販売に転じたが、被告製品はユーザーが薬剤分包装置に装着することで一体化製品が生産され、本件特許発明の技術的範囲に属することになるかが争われた。原判決(大阪地裁)は請求を一部認容し、控訴人らが不服として控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)一体化製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか、特に構成要件Aの「用いられ」という文言の解釈、(2)特許法101条1号の間接侵害(生産にのみ用いる物)の成否、(3)補正要件違反・明確性要件違反・サポート要件違反・新規性欠如・進歩性欠如の各無効理由の有無である。とりわけ中心的論点は、物の発明である本件訂正発明の構成要件Aが「薬剤分包装置に用いられ」と記載している点について、控訴人らは当該装置に「現実に用いられ」ることを要すると主張したのに対し、被控訴人は「用いることが可能な」構成を有すれば足りると主張した点にあった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、控訴をいずれも棄却し、原判決を維持した。まず構成要件Aの「用いられ」の意義について、助動詞「られる」が受け身とともに可能を示すものであり、物の発明の特許請求の範囲は物の構造・特性を特定するものとして解釈すべきであることに鑑み、「用いることが可能な」を意味すると解するのが相当と判断した。そうすると、一体化製品が構成要件Aによって特定される薬剤分包装置に現実に使用されるか否かは、技術的範囲への属否の判断に影響を及ぼさないと判示した。出願経過禁反言の主張についても、被控訴人が意見書で「用いられることを前提とするロールペーパについての発明」と述べていることから、構成要件Aを充足する装置に用いることが可能な構成のロールペーパを意識的に除外したとは解されないとした。間接侵害の成否については、被告製品が一体化製品の生産にのみ用いる物に該当するとした原判決の判断を是認し、用途発明類似に解すべきとの控訴人らの主張を排斥した。無効理由についても、補正要件違反(「2つ折りされたシート」への補正)、明確性要件違反、サポート要件違反、新規性・進歩性欠如のいずれも理由がないとして退けた。本判決は、物の発明のクレーム中に用途・使用に関する記載がある場合における「用いられ」の解釈として、物の構造・特性を特定する「用いることが可能な」構成で足りるとした点に、クレーム解釈の実務上重要な意義を有する。