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下級裁

業務上過失往来危険,業務上過失致死被告事件

判決データ

事件番号
平成31わ133
事件名
業務上過失往来危険,業務上過失致死被告事件
裁判所
神戸地方裁判所
裁判年月日
2019年7月5日
裁判官
伊藤太一

AI概要

【事案の概要】 被告人は、平成28年7月15日当時、海運会社の従業員船員として勤務し、総トン数499トンの汽船Bの船長として同船の操船業務に従事していた。同日午前11時30分頃、荷役場所の愛媛県新居浜市へ向かうため、瀬戸内海を自動操舵により速度約12ノットで航行させていたところ、被告人は自身のスマートフォンでニュース閲覧アプリやパズルゲームを操作し、前方の見張りを怠った。午前11時42分頃、スマートフォンの操作を中断して前方を確認したところ、船首から右約30度前方約500メートルの位置に、進路前方に向けて進む汽船F(総トン数499トン)を発見した。この時点で直ちに右転すれば衝突は回避可能であった。海上衝突予防法上、汽船Bは互いに針路を横切る動力船を右舷側に見る避航船の立場にあり、被告人には、できる限り早期かつ大幅に動作をとる義務があった。被告人は操舵レバーを自動操舵から手動に切り替え、左転により回避を試みたが、誤って操舵レバーの電源を切ってしまい、舵が全く効かなくなったことに気づかないまま、針路を変更せず直進した。その結果、汽船Bの船首を汽船Fの左舷中央付近に衝突させ、同船を転覆させて船舶の往来の危険を生じさせるとともに、汽船Fの船長G(当時50歳)および機関士H(当時28歳)を海中に転落させ、溺死させた。検察官は禁錮3年を求刑した。 【判旨(量刑)】 本件の直接の過失は、避航船として手動操舵による適切な衝突回避措置を講じるべきところ、操舵レバーの電源そのものを切って汽船Bを制御不能な状態にしたことである。豊富な航行経験を有する船長として危急時にこそ冷静に対処すべき立場にありながら、原因にも気づかないほどに冷静さを欠いた点は甚だしい過失というほかない。結果は2名の死亡という重大なものであり、突然愛する家族を失った遺族の悲しみ、特に死を理解できない幼子を含む遺族の悲痛は計り知れない。加えて被告人は、公判廷において反省の意を示しつつも、被害者側にも海上衝突予防法17条3項の最善の協力義務があったなどと責任回避的な言動をし、海難審判等で誠意ある対応を怠ったことも一般情状として不利に考慮せざるを得ない。 検察官が重視するスマートフォン操作による前方不注視については、画面に極度の集中を生じさせ注意力を著しく奪うものであり、特にパズルゲームは没頭しやすく、操船という高度な注意が求められる場面での使用は悪質である。「ながらスマホ」による事故が社会問題化していた当時、被告人自身も他の乗組員に操船中の携帯操作を禁止するよう指導していた事情もあり、前方不注視の態様の悪質性は際立つ。もっとも、公訴事実として摘示された過失はスマートフォン操作を中止し汽船Fを発見した後の避航措置の懈怠であるから、訴因外事実の実質処罰禁止と行為責任主義の観点から、スマートフォン操作の点は本件犯行に至る事情として限定的に考慮するにとどめるべきである。 他方、弁護人が主張する被害者側の保持船としての協力義務違反については、汽船Fは汽笛信号を5回鳴らしており、また操舵レバーの電源が切られ船舶が制御不能になる事態を想定することは困難であったうえ、保持船の協力義務は避航船の回避義務を免除するものではないから(1972年海上衝突予防国際規則17条(d)参照)、量刑上重視すべきものとはいえない。 以上より、被告人の刑事責任は相当に重いが、過失犯における量刑傾向との均衡からは直ちに実刑に処すべき事案とまではいえず、執行猶予を付することができる上限の刑をもって臨むのが相当であるとして、被告人を禁錮3年、執行猶予5年に処した。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。