AI概要
【事案の概要】 本件は、商標登録の取消を求めた審判請求が認められなかったことから、請求人である原告が特許庁審決の取消を求めた訴訟である。取り上げられているのは、被告が保有する登録第5275079号の商標「MUSUBI」(標準文字、平成21年10月23日登録)であり、指定役務のうち第35類の「家具・金庫及び宝石箱の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」および「台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、商標法50条1項(いわゆる不使用取消審判)に基づく取消しが請求された。 被告は、衣料品・インテリア・雑貨・飲食料品等を取り扱う通信販売事業者であり、平成21年4月から「MUSUBI」というギフトカタログを創刊してカタログオーダーギフト業を営んできた。これは、贈答品の「贈り主」が被告にカタログ代金等を支払うと、被告が「受取手」に対してギフトカタログを送付し、「受取手」がその中から好みの商品を選んで被告に注文することで、被告が当該商品を「受取手」に届けるという贈答形態である。平成29年発行のカタログ「MUSUBI/Grand/CATALOG GIFT」には、キッズハンガーシェルフ(家具)やアルミ鍋・フライパン5点セット(台所用品)等が掲載され、本件要証期間内である平成29年11月から12月にかけて、これらが受取手に配達されていた。特許庁は、被告の上記行為は指定役務についての商標の使用に当たるとして取消審判の請求を不成立とし、原告がその取消しを求めた。 【争点】 被告のカタログオーダーギフト業が、指定役務である「家具」「台所用品」等の「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(いわゆる小売等役務)に該当するといえるかが中心的な争点である。原告は、被告の事業は「贈り主」から「受取手」への贈答の媒介・代行にすぎず、独立した小売等役務とは認められない、実質はギフトカタログ(印刷物)の販売あるいは資金決済法上の「前払式支払手段の発行」(第36類)であって、第35類の指定役務に商標を使用していないと主張した。 【判旨】 知財高裁第2部は、原告の請求を棄却した。裁判所は、被告・贈り主・受取手の三者間の取引を全体として観察すると、被告は贈り主に対しては贈り主の費用負担で商品を受取手に譲渡することを約し、受取手に対しては注文を受けた商品を引き渡しているのであって、ギフトカタログを媒介として業として一般消費者に商品を譲渡する小売業者であると評価できると判断した。そのうえで、被告は各種商品を掲載したカタログを受取手に提供して商品選択・注文の便宜を図っており、これは小売業者が顧客に対して行う便益の提供に該当するとした。 裁判所は、原告が主張した「贈答の媒介・代行にすぎない」との評価を退け、受取手に対する商品配送は単なる付随行為ではなく独立した商取引であると認定した。また、プレスリリース上の「ギフトを通し人と人を結びつける」との表現は事業紹介の文言にすぎないとし、ギフトカタログがフリマアプリで二次流通している事実も結論を左右しないとした。さらに、仮に「お申込みはがき」が資金決済法上の前払式支払手段に該当するとしても、それと小売等役務の提供の有無とは別問題であると整理した。 そして本件使用カタログ表紙にやや意匠化して表示された「MUSUBI」の文字は、標準文字からなる本件商標と社会通念上同一であり、カタログは「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」(商標法2条3項3号・4号)に当たるから、これにより小売等役務が提供されたといえ、被告は本件要証期間内に指定役務について本件商標を使用していたと認め、審決に違法はないとした。